金融商品の基礎講座
第7回 デリバティブ取引
2008.10
1.デリバティブ取引の意義
(1)定義
デリバティブ(金融派生商品)とは、債券、株式、為替などの現物金融商品のリスクをコントロールするために、現物金融商品を基本として派生していった金融商品のことで、具体的に以下のような取引が該当します。
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(2)会計処理
従来、デリバティブの処理については、包括的な会計基準がなく実務慣行として決済基準(実現主義)が採用されてきました。しかし、決済基準のもとでは、決済されるまでデリバティブの損益が財務諸表に反映されないことになるため、企業が保有するデリバティブ取引に係る契約の内期末日までに利益の出ている方だけを決済させる方法によって利益操作が可能でした。金融商品会計基準では、デリバティブ取引により生じる正味の債権・債務は、原則として時価をもって貸借対照表価額とする事とされました。また、デリバティブ取引の評価差額は、全て当期の損益として処理します。
2.ヘッジ会計
デリバティブ取引の多くはその性質から、ヘッジ手段として利用されます。従って、ヘッジ手段として利用されるデリバティブ取引について、時価評価される一方、ヘッジ対象である現物資産について原価評価されることによる損益の計上時期のミスマッチを補正する等のために、以下で述べるヘッジ会計が認められています(金融商品会計基準第五)。
(1)ヘッジ取引の意義
ヘッジとは、有価証券、外貨建借入金など現物資産・負債が抱える価格・金利・為替の変動リスクを、デリバティブ取引等を使って、回避・軽減することです。ヘッジには、相場変動リスクをヘッジする取引と、金利変動リスクに対しキャッシュ・フローを固定するヘッジ取引があります。
ヘッジの対象となる、リスクにさらされている現物資産・負債のことをヘッジ対象といい、ヘッジの際に用いるデリバティブ取引をヘッジ手段といいます。
(2)ヘッジ会計の意義
ヘッジ会計とは、ヘッジ取引のうち一定の要件を満たすものについて、ヘッジ対象に係る損益とヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識し、ヘッジの効果を会計に反映させるための特殊な会計処理をいいます。
(3)ヘッジ会計の方法
ヘッジ会計の方法には以下の二つの方法があります。
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(*1) |
現時点では時価ヘッジ会計は、その他有価証券をヘッジ対象とする場合以外は認められていない。なお、ヘッジ対象たるその他有価証券の時価変動要因のうち特定のリスク要素(金利・為替・信用等)のみをヘッジの目的としているときは、そのリスク要素の変動に係る時価の変動額を当期の損益として計上し、それ以外の部分は純資産直入をする(金融商品会計に関する実務指針160、185)。 |
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<仕訳例> |
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1.繰延ヘッジ |
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i) |
ヘッジ手段であるデリバティブ取引に損失が生じている場合 |
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ii) |
ヘッジ手段であるデリバティブ取引に利益が生じている場合 |
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2.時価ヘッジ |
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i) |
ヘッジ対象である「その他有価証券」に利益、ヘッジ手段であるデリバティブ取引に損失が生じている場合
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ii) |
ヘッジ対象である「その他有価証券」に損失、ヘッジ手段であるデリバティブ取引に利益が生じている場合
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(*2) |
「金融商品会計に関する実務指針」の設例(18〜22)では、デリバティブ取引の名称(例:金利スワップ、為替予約等) |
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(4)ヘッジ会計の要件
ヘッジ会計は、ヘッジ取引全てに適用されるわけではなく、以下のような要件を充足する場合に適用されます。
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1. |
ヘッジ取引開始時にヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが客観的に認められること |
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i) |
当該取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、文書により確認できること |
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ii) |
企業のリスク管理方針に関して明確な内部規定及び内部統制組織が存在し、当該取引がこれに従って処理されることが期待されること |
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2. |
ヘッジ取引開始時以降において、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益が高い程度で相殺される状態またはヘッジ対象のキャッシュ・フローが固定され、その変動が回避される状態が引き続き認められることによって、ヘッジ手段の効果が定期的に確認されていること |
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(5)金利スワップの特例
以下の要件を満たしている金利スワップについては、時価評価を行わず、金利スワップにかかる金銭の受払いの純額等を当該資産または負債にかかる利息に加減して処理することができます。
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1. |
金利スワップの想定元本と貸借対照表上の対象資産または負債の元本金額がほぼ一致していること |
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2. |
金利スワップとヘッジ対象資産または負債の契約期間および満期がほぼ一致していること |
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3. |
変動金利の基礎となっているインデックスと対象資産または負債の変動金利の基礎となっているインデックスがほぼ一致していること |
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4. |
金利スワップの金利改定のインターバルおよび金利改定日と、ヘッジ対象の資産または負債の金利改定日がほぼ一致していること |
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5. |
金利スワップの受払条件が、スワップ期間を通して一定であること(同一の固定金利および変動金利のインデックスがスワップ期間を通して使用していること |
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6. |
金利スワップに期限前解約オプション、支払金利のフロア−または受取金利のキャップが存在する場合には、ヘッジ対象の資産または負債に含まれた同等の条件を相殺するためのものであること |
3.税務上の取扱い
会計上デリバティブ取引が時価評価されることに合わせて、法人税法上でもデリバティブの評価損益を益金または損金の額に算入するという取扱いになりました(法人税法第61条の5第1項)。また、ヘッジ会計を適用している場合、繰延ヘッジ・時価ヘッジともに、会計と税務で取扱いに大きな相違はありません。
