あずさ監査法人

外形標準課税

2003.05

石原新税ともいわれる「銀行外形標準課税」が平成12年度から適用され、外形標準課税に対する関心が高まる中、平成15年度の税制改正で地方税法等の一部を改正する法律が平成15年3月24日に国会で可決、成立し、平成15年4月1日に施行されています。


I.外形標準課税の概要

1.外形標準課税導入の発端

我が国の長期にわたる不況により、赤字企業が増加し、その結果、法人の所得に対して課税している国及び地方自治体の財政は逼迫した状態になっています。そのような状況のもと、平成12年2月7日に、東京都は現状を打破すべく安定的な税収及び税負担の公平性の確保を目的として、従来とは異なる基準による法人事業税を課税することを発表しました。

2.外形標準課税とは?

東京都の当該発表により「外形標準課税」という言葉がマスコミで頻繁に取り上げられるようになりましたが、外形標準課税は従来から存在するもので、海外においても現在さまざまな形で取り入れられています。

従来、法人事業税は法人税と同様、原則として所得を課税標準として課税されていますが、外形標準課税は、所得以外の基準、即ち従業員数や資本金、給料総額、事業活動価値等を基準として課税されます。

税制調査会では、法人事業税への外形標準課税の導入は、税負担の公平性の確保、応益課税としての税の性格の明確化、地方分権を支える基幹税の安定化、経済の活性化・経済構造改革の促進などの重要な意義を有する改革であるとしています。さらに、外形標準課税については、厳しい景気の状況を踏まえ慎重に対処すべきとの意見もあるが、受益と負担の関係を明確にして真の地方分権の実現に資するため、早急に導入すべきであるとも述べています(平成14年11月「平成15年度における税制改革についての答申」)。

ところで、税の課税方法には応能主義と応益主義の2通りの考え方があります。前者は負担能力に応じて課税するもので、後者は公共サービスを受ける便益に応じて課税するものです。地方自治体の税収の相当の部分を占める事業税は、応益主義がとられていると考えられており、地方自治体から提供されるサービスを受けることによる対価であるため、経費として損金処理が認められています。従って、本来事業税は所得の如何にかかわらず受け取るサービスに応じて負担すべきものと考えられ、外形標準課税がなじみやすい税でもあるのです。

3.事業税の位置付け

上述のように、外形標準課税は法人事業税に対して導入が図られたわけですが、そもそも法人事業税は税体系の中でどのような位置を占めるのでしょうか。

国民が負担している租税については、国税と地方税の比率が約3:2となっていますが、地域間の財源の均衡を図るため、国税の一定割合が地方交付税という使途を特定しない財源として地方に交付され、さらに、補助金のように一般的に使途が特定されている国庫支出金が地方に対して支出されており、最終的な支出ベースは国と地方の比率が約2:3と逆転しています。このようにして、地方公共団体が事業を行うための財源が国から地方に移転されています。

地方公共団体の歳入のうち、地方税はその約3分の1を占め、ついで、地方交付税、国庫支出金、地方債の順になっています。平成12年度の地方の歳入は約100兆3千億円で、そのうち約35兆円5千億円(35.4%)が地方税です。地方税には道府県民税と市町村民税があり、平成12年度には道府県民税はその約43%、15兆6千億円の税収となっています。事業税はこの道府県民税の一つで、他に住民税、不動産取得税、地方消費税、自動車税、自動車取得税等が道府県民税を構成しています。

4.外形標準課税導入の意義

(1)公平性の確保

従来の制度では事業活動の規模が大きな法人でも所得を課税標準としていたため、全法人の7割とも言われる赤字法人には事業税の納税義務が発生しません。しかし、法人は地方自治体の行政サービスを受けて事業活動を行っているのですから、その事業活動に応じた税金を広く浅く負担する仕組みを作ることが税負担の公平性の観点から要請されます。

(2)安定的な税収の確保

長期にわたる不況により、地方税の中でも事業税の占める割合は減少の一途を辿っています。事業税の道府県民税収全体に占める割合は、平成2年度には41.8%であったものが、平成12年度には26.6%にまで落ち込んでいます。金額ベースでも、事業税は平成2年度には6兆5千億円であったものが平成12年度には4兆1千億円と大きく減少しています。

地域の産業活動を支える行政サービスは常に安定的に供給される必要性があり、その財源となる事業税は安定的に徴収され税収の変動の少ないことが必要となります。そのためには課税標準も安定的な、変動の少ない基準が求められます。

5.外形基準

政府税制調査会では、外形標準課税を採用するに当たり、1.事業活動規模との適切な関係、普遍性・中立性の確保、2.簡素な仕組み、納税事務負担増大の回避の2点を基本的な考え方とした上で、所得以外の外形基準として、次の4つの方式の検討が行われました。そのうち「事業活動価値」が法人の事業活動を最も客観的に表わしています。

(1)事業活動によって生み出された価値(事業活動価値)

 

1.

「利潤」「給与総額」「支払利子」「賃借料」により算定

 

2.

法人事業税の全体を事業活動価値による課税とすべきとされている


(2)給与総額

 

1.

給与総額は事業活動価値の概ね7割を占めているもの

 

2.

所得基準による課税と併用することが適当とされている

 

3.

事業活動価値に近似する仕組みとの性格付けが可能


(3)物的基準と人的基準の組み合わせ

 

1.

物的基準(事業所家屋床面積、事業用資産の価値又は減価償却費)と人的基準(給与総額)の組み合わせ

 

2.

所得基準による課税と併用することが適当とされている


(4)資本金等の金額

 

1.

資本金等の金額の区分ごとに定額で課税(事務所等の数や従業員数を加味)

 

2.

所得基準や他の外形基準による課税との組み合わせを基本とすることが適当とされている



II.東京都等の外形標準課税と改正地方税法による外形標準課税の相違


東京都、大阪府が導入した外形標準課税は、大手銀行等のみを対象としたもので、地方税法を改正するものではなく、特例規定(地方税法第72条の19)を活用し、業務粗利益を課税標準として、平成12年4月1日以後開始する事業年度から5年間だけ実施する時限措置です。

一方、平成15年3月24日に国会で可決、成立した平成15年度税制改正による外形標準課税は、全ての業種を対象に広く浅く税負担を求める制度となっています。

区分 東京都・大阪府の方式 平成15年度改正地方税法
根拠 地方税法の特例規定 地方税法(改正)
課税対象 資金量5兆円以上の銀行等 資本金1億円超の法人(全業種)
課税標準 業務粗利益
(=資金利益+役務取引等利益+その他業務利益)
所得割の他、付加価値割及び資本割
税率 3%(但し、特別法人については2%)
所得割 7.2%
付加価値割 0.48%
資本割 0.2%
課税期間 5年間 期間の定めなし


III.平成15年度税制改正

平成14年12月13日に「平成15年度与党税制改正大綱」において外形標準課税の導入が決定され、改正地方税法は平成15年3月24日の国会で可決、成立し、同4月1日より施行されています。この税法改正による外形標準課税の導入に伴い、東京都や大阪府の銀行に対する外形標準課税は平成15年度をもって終了することになります。

1.適用時期

平成16年4月1日以後に開始する事業年度から外形標準課税が適用されます。

2.適用対象

資本金が1億円超の会社が対象となります。業種による制限はありません。資本金が1億円以下の会社は、従来どおり、所得割のみで事業税が課税されます。

3.課税標準

現在の事業税は課税所得の全額について所得を課税標準として9.6%の税率により事業税が課されています。

平成16年度からは、負担の変動幅を縮小するため、所得基準を4分の3適用し、残りの4分の1は外形基準で課税されます。

課税標準

4.税率

所得割の税率が現行9.6%から7.2%に引き下げられます。また、制限税率は従来1.1倍でしたが、都道府県の裁量の幅が拡大し、1.2倍となりました。

 
所得割
付加価値割 資本割
標準税率 所得のうち年400万円以下の金額 3.8% 0.48% 0.2%
所得のうち年400万円を超え、年800万円以下の金額 5.5%
所得のうち年800万円を超える金額および清算所得 7.2%
制限税率 標準税率の1.2倍



5.外形基準

外形基準部分については、付加価値割と資本割とがあり、それぞれ次のとおりです。

区  分 範  囲 税  率
付加価値割 報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料±単年度損益
0.48%
資本割 資本金+資本積立金額
0.2%

(1)付加価値割

付加価値割は各事業年度毎に算定し、各事業年度の収益配分額(報酬給与額、純支払利子および純支払賃借料の合計額をいいます)と各事業年度の単年度損益を合算することにより算定します。

(地方税法72条の14)

付加価値割

1.収益配分額

イ.報酬給与額

各事業年度において事務所または事業所の従業者等の労働に対して支出されるべき報酬、給料、賃金、賞与および退職給与並びにこれらの性質を有するものの金額を合計したもの(以下「1」+「2」)で、原則として法人税において損金の額に算入されたものに限られます。

 

1.

法人が各事業年度においてその役員または使用人に対する報酬、給料、賃金、賞与、退職手当その他これらの性質を有する給与として支出する金額の合計額


 

2.

法人が各事業年度において確定給付企業年金法第3条第1項に規定する確定給付企業年金に係る規約に基づいて加入者のために支出する掛金(これに類するものを含む)で一定のものの合計額


(地方税法72条の15)


ロ.収益配分額に係る雇用安定控除の特例

報酬給与額が収益配分額の70%相当額を超える場合には、当該超える額(雇用安定控除額)が収益分配額から控除されます。(地方税法72条の20)

収益配分額 1,000
報酬給与額
800
純支払利子
100
純支払賃借料
100
報酬給与額 >収益配分額×70%
800  > 1,000 ×70%=700  800−700=100
収益配分額 =1,000−100=900

ハ.労働者派遣に関する特例

労働者派遣契約に基づき派遣労働者の派遣を受け、または派遣を行う法人の報酬給与額については、次のように取り扱われます。(地方税法72条の15II)

1.派遣労働者の派遣を受ける法人

派遣労働者の派遣を受ける法人については、当該派遣労働者に係る労働者派遣契約の契約料(これに相当するものを含む)のうち当該事業年度に係るものに75%を乗じた金額を報酬給与額に加えて得た金額を報酬給与額とみなされます。

課税標準である
報酬給与額

受入派遣労働者に係る
派遣契約料 ×75%

自社の従業員に係る
報酬給与額


2.派遣労働者の派遣を行う法人

派遣労働者の派遣を行う法人については、報酬給与額から、当該派遣労働者に係る報酬給与額を限度として、当該派遣労働者に係る労働者派遣契約の契約料(これに相当するものを含む)のうち当該事業年度に係るものに75%を乗じた金額を控除して得た金額を報酬給与額とみなされます。

課税標準である
報酬給与額

自社の従業員に係る
報酬給与額

派遣労働者に係る
派遣契約料 ×75%


2.支払利子

純支払利子は、各事業年度において支払うべき支払利子の合計額から、この合計額を限度として、各事業年度において支払を受けるべき受取利子の合計額を控除した金額となります。なお、支払利子は、当該事業年度の法人税の所得の計算上損金の額に算入されるものに限られます。

(地方税法72条の16)

純支払利子

支払利子合計額

受取利子合計額


3.純支払賃借料

純支払賃借料は、各事業年度において支払うべき土地及び家屋に係る賃借料その他経済的な性質がこれに準ずるもの(当該土地および家屋を使用しうる期間が継続して1月に満たない場合を除く)の合計額から、この合計額を限度として、各事業年度において支払いを受けるべき受取賃借料の合計額を控除した金額となります。なお、支払賃借料は、法人税の所得の計算上、損金の額に算入されるものに限られます。

家屋は、住宅、店舗、工場、倉庫その他の建物で、これらと一体となって効用を果たす構築物および附属設備を含みます。また、賃借料は、賃借権、地上権、永小作権その他の土地または家屋の使用または収益を目的とするものの対価として支払う金額をいいます。(地方税法72条の17)

純支払賃借料

支払賃借料合計額

受取賃借料合計額


4.単年度損益

単年度損益は、連結申告法人以外の法人の場合は、各事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額によるものとし、一定の場合以外は、当該各事業年度の法人税の課税標準である所得の例によって算定します。連結申告法人の場合は、各事業年度の期末日の属する各連結事業年度の個別帰属益金額から個別帰属損金額を控除した金額によるものとし、一定の場合以外は、当該連結事業年度の法人税の課税標準である連結所得に係る当該連結申告法人の個別所得金額の計算の例によって算定します。ただし、欠損金の繰越控除を行わなかったものとした場合における法人事業税の所得となります。

なお、各事業年度の単年度損益の計算において欠損金額が生じた場合には、当該欠損金額を収益配分額から控除します。(地方税法72条の18)

法人

単年度損益

連結申告法人以外
の法人

各事業年度の益金の額−損金の額

連結申告法人

各連結事業年度の個別帰属益金の額−個別帰属損金の額


5.国外において事業を行う内国法人の付加価値割の課税標準

国外において事業を行う内国法人の付加価値割の課税標準は、その内国法人の事業の付加価値額の総額から外国の事業に帰属する付加価値額を控除して得た金額となります。この場合に、外国の事業に帰属する付加価値額の計算が困難であるときは、一定の計算により算定した金額を、その内国法人の外国の事業に帰属する付加価値額とみなします。

(地方税法72条の19)

課税標準となる
付加価値額

付加価値額の総額

外国に帰属する
付加価値額


(2)資本割

1.原則

資本等の金額(資本金と資本積立金額または連結個別資本積立金額の合計額をいいます)は、各事業年度毎に算定し、原則として、各事業年度終了の日における資本等の金額が課税標準となります。なお、事業年度が1年未満の場合、資本等の金額を月割で算定します。月数は暦に従い計算し、1カ月に満たないときは1カ月とし、1カ月に満たない端数が生じたときは切り捨てます。

(地方税法72条の21 I、II)

2.持株会社に係る特例

イ.持株会社の定義

持株会社とは、発行済株式総数の50%を超える数の株式を直接または間接に保有する子会社の株式の帳簿価額が、総資産の額の50%を超える法人をいいます。


ロ.持株会社の特例

持株会社については、資本等の金額から、当該資本等の金額に総資産のうちに占める子会社株式の帳簿価額の割合を乗じて得た金額を控除して算出した金額が資本等の金額となります。

(地方税法72条の21III)

課税標準となる
持株会社の
資本等の金額

資本等の
金額

資本等の
金額

×

子会社株式
の簿価

総資産


3.資本等の金額が一定の金額を超える法人に係る特例

資本等の金額が1,000億円を超える法人については、1,000億円に、次に掲げる資本等の金額の区分に応じ、次に定める率を乗じて得た金額の合計額を加えた金額が資本割の課税標準となります。ただし、資本等の金額が1兆円を超える場合には、資本等の金額を1兆円とみなして計算します。

(地方税法72条の21IV)

 資本等の金額

  1,000億円超5,000億円以下の部分

50%

  5,000億円超1兆円以下の部分

25%


資本等の金額が一定の金額を超える法人に係る特例

4.国外において事業を行う内国法人の資本等の金額

国外において事業を行う内国法人の資本割の課税標準とすべき資本等の金額は、資本等の金額に全世界所得に係る付加価値額のうちに占める国内所得に係る付加価値額の割合を乗じて得た金額となります。(地方税法72条の22)

課税標準となる
資本等の金額

資本等の金額

×

国内所得に係る付加価値額
全世界所得に係る付加価値額



大阪事務所 第2事業部
藤井 留美