企業経営に関するトピック解説

2006.06
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ストック・オプション等会計基準について

2005年12月27日に企業会計基準委員会から、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」(以下、「ストック・オプション会計基準」という)および企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」(以下、「適用指針」という)が公表されました。これにより、今後はストック・オプションを従業員等に付与した場合、原則として費用(株式報酬費用)を計上し、相手勘定は「新株予約権」として純資産の部に計上することになります。ストック・オプションが行使された場合は、新株予約権として計上した額のうち、当該権利行使に対応する部分を払込資本に振り替えます。また、ストック・オプションが権利行使されずに失効した場合は、新株予約権として計上した額のうち、当該失効に対応する部分を「新株予約権戻入益」等の科目で特別利益の部に計上します。ストック・オプション会計基準およびその適用指針は、原則として会社法施行日(平成18年5月1日)後に付与されたストック・オプション等に適用されます。


I.ストック・オプションの概要

1.ストック・オプションとは

ストック・オプションとは、一定期間中に一定の価格でストック・オプションの対象であ る株式を購入できる権利であり、ストック・オプション会計基準では、「自社の株式を原資産とするコール・オプション(自社株式オプション)のうち、特に企業がその従業員等に報酬として付与するもの」と定義されています。ストック・オプションには次のような特徴があります。

(1)

会社財産の流出がない

(2)

勤労意欲の増進や業績向上等のインセンティブ効果を有している

(3)

市場で売買される株式オプションとは異なり、さまざまな制限が付されている


2.ストック・オプションの費用処理の必要性

通常、ストック・オプションは勤労意欲の増進や業績向上などのインセンティブ効果を期待して従業員等に付与されます。ストック・オプション会計基準では、従業員等はストック・オプションを対価としてこれと引換えに企業にサービスを提供し、企業がこの提供されたサービスを消費しているところに、費用計上の根拠があるとしています。この考え方によれば、ストック・オプションは、従業員等により提供されるサービスの対価である(=対価性)という点で現金による給与等と同様であると考えられ、費用計上すべきであるということになります。


II.会計処理の概要

1.時系列的にみた会計処理

ストック・オプションの会計処理を行うためにポイントとなる日と会計処理をまとめたものが図表1(PDF 49kb)です。以下、時系列的に会計処理を説明します。

(1)

株式報酬費用総額の決定

 

ストック・オプションに係る株式報酬費用を計上する第1段階として、まず株式報酬費用総額を決定する必要があります。株式報酬費用総額は以下の式によって算定し、これをストック・オプション会計基準ではストック・オプションの「公正な評価額」と呼んでいます。

付与日におけるストック・オプションの公正な評価単価

×

権利が確定すると見込まれるストック・オプション数


付与日とは、ストック・オプションが付与された日であり、会社法にいう募集新株予約権の割当日がこれに該当します。また、「公正な評価単価」とは、ストック・オプション1単位当たりの公正価値を指しますが、ストック・オプションは通常、市 場で取引されていないため、ブラック・ショールズ・モデルや二項モデルといった算定技法を用いてこれを算定することになります。ただし、このような算定技法を未公開企業にまで要求することは実務上難しいことから、未公開企業についてはストック・オプションの公正な評価単価に代えて、単位当たりの本源的価値(付与日における自社株式の評価額と行使価格との差額)を用いることが認められます。

時間の経過に伴い、権利が確定すると見込まれるストック・オプション数の見積りに重要な変動が生じた場合は、前記の式に反映させ、変動による影響は見直しを行った会計期間の損益として計上します。さらに、権利確定日(後述)には、ストック・オプション数を実際の権利確定数と一致させ、これにより株式報酬費用総額が確定することになります(逆にいえば、権利確定日までは、株式報酬費用総額は確定しません)。

権利確定日において確定した株式報酬費用総額は、その後、後述の条件変更が行われない限り、再測定(再計算)されることはありません。

(2)

株式報酬費用の認識

 

上記で測定した株式報酬費用総額は、付与日から権利確定日までの「対象勤務期間」にわたって費用に計上します。権利確定日とは、ストック・オプションを行使することができる権利を獲得する日であり、権利確定のために何らかの条件(権利確定条件、図表2参照)が付されている場合は、当該条件を満たした日が権利確定日となります。付与と同時に権利が行使できるような取決めについては、付与日に権利が確定していると考えられるため、付与日に一時に費用計上します。また、権利確定条件が複数付されている場合は、原則として図表3に従い会計処理することになります。


借方の株式報酬費用については、付与時点では、損益項目でなく資産に計上され、その後の会計年度において損益として認識されることになるものもあります。たとえば、自社株式オプションの交付により機械装置を取得したケースなどがこれに該当します。

貸方の新株予約権については、公開草案の段階では、独立した中間的な区分を設けるべきか否かが検討されましたが、企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」により、純資産の部に計上されることになりました。

図表2■権利確定条件の主な種類と対象勤務期間との関係

権利確定
条件の
種類

権利確定
条件の内容

対象勤務期間
との関係

勤務条件

権利確定のために、従業員等に一定期間の勤務を要求する条件

付与日から勤務条件を満たして権利が確定する日までの期間

3年間の勤務を経てストック・オプションの権利が確定する

この場合の対象勤務期間は、3年間

業績条件

権利確定のために一定の業績を達成することを要求する条件

業績条件が達成できる時期を会社が見積り、合理的な対象勤務期間を予測することが必要である

主力製品の年間売上高が基準年よりも10%増加したときに権利が確定する

会社が3年後に達成できると予測するのであれば、対象勤務期間3年として会計処理する

株価条件

業績条件の一種で、一定の株価目標を達成することを要求する条件

業績条件と同様、合理的な対象勤務期間を予測することになるが、合理的な予測を行うことが困難なため予測を行わない場合は、対象勤務期間がないものとみなし権利確定条件が付されていない場合と同様に、付与日に一時に費用計上する

株価が500,000円を超えた場合に権利が確定する

株価が500,000円を超える時期を合理的に測定することは困難なため予測は行わないことにする

付与日に一時に費用計上する


図表3■複数の権利確定条件が付されている場合の取扱い

and 条件

条件Aと条件Bの両方を満たした時点で権利が確定する

条件Aと条件Bによる対象勤務期間のうち、いずれか長い方を対象勤務期間とする

or 条件

条件Aと条件Bのいずれかを満たした時点で権利が確定する

条件Aと条件Bによる対象勤務期間のうち、いずれか短い方を対象勤務期間とする


(3)

権利行使時の会計処理

 

ストック・オプションが権利行使され、株式が交付された場合は、新株予約権として計上した額のうち、当該権利行使に対応する部分を払込資本に振り替えます。


(4)

権利不行使による失効の会計処理

 

権利確定後のストック・オプションが権利行使されないまま権利行使期間が終了した場合、当該ストック・オプションは失効します。ストック・オプション会計基準では、ストック・オプションが権利不行使により失効した結果、新株予約権の計上に伴う純資産の増加が株主との直接的な資本取引によらないことが判明した場合は、特別利益に計上したうえで株主資本に算入することとしています。


(5)

条件変更時の会計処理

 

条件変更とは、付与したストック・オプションに係る条件を事後的に変更し、ストック・オプションの公正な評価単価、ストック・オプション数または合理的な費用の計上期間のいずれか1つ以上を意図して変動させることをいいます。条件変更は、ストック・オプションの対象である株価が著しく低迷している場合などに行われます。わが国においては、条件変更は実務上あまり行われないと考えられますが、以下の3つの場合に分けてそれぞれの会計処理を規定しています(図表4参照)。

図表4■条件変更の会計処理

公正な評価単価を変動させる場合

条件変更日におけるストック・オプションの公正な評価額と付与日における公正な評価額とを比較し、条件変更による増加分について追加的に株式報酬費用をストック・オプション会計基準の規定に従い計上する(減少分は反映させない)

ストック・オプション数を変動させる条件変更

条件変更による影響額を、将来に向けて合理的な方法にもとづき残存期間にわたって計上する

費用の合理的な計上期間を
変動させる条件変更

条件変更前の残存期間に計上すると見込んでいた金額を、合理的な方法にもとづき新しい残存期間にわたって費用計上する


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