企業経営に関するトピック解説

2005.06
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税効果会計 〜繰延税金資産の回収可能性〜

税効果会計におけるさまざまな項目のなかで、企業の皆様の関心がもっとも高いと思われる、繰延税金資産の回収可能性について、日本公認会計士協会から公表されている監査委員会報告第66号および第70号にもとづき、ポイントを整理しています。


I.はじめに

繰延税金資産は、将来の課税所得の発生に伴う法人税等の支払額を減額する効果を有し、一般的には法人税等の前払額に相当するため、資産としての性格を有します。すなわち、繰延税金資産の計上は、発生した将来減算一時差異等の解消によって将来の納付税額の減額効果があること、法人税等の前払額が将来の課税所得から回収することができることを根拠とします。これは、税務上の繰越欠損金等について繰延税金資産を計上する場合も同様です。この判断を適切に行うためには、将来の課税所得の十分性やタックスプランニングの存在等が必要ですが、これらは、いずれも将来事象の予測や見積りに依存するという不確実さをはらんでいるため、その客観性を判断することが困難です。また、会計ビックバン以降、税務会計と企業会計の乖離が顕著になり、将来減算一時差異が金額的にも多額になり、繰延税金資産の計上額が財務諸表に重要な影響を与えるようになっています。特に、繰延税金資産は商法上配当制限の定めがないため、その回収可能性を十分に検討する必要があります。

将来減算一時差異または税務上の繰越欠損金等が、将来の税金負担額を軽減する効果を有していると見込まれる場合にのみ、繰延税金資産の回収可能性があると判断することができ、見込まれない場合には、繰延税金資産の回収可能性があると判断することはできません。

なお、過年度に計上した繰延税金資産についても、将来の課税所得の範囲を超えて繰延税金資産が計上されていないかどうか、将来の課税所得に対応させることのできないスケジューリング不能な一時差異について、安易に繰延税金資産が計上されていないかどうかについて慎重に検討し、毎期見直しを行って、将来の税金負担額を軽減する効果を有していると見込まれなくなった場合、過大となった金額を適時に取り崩す必要があります。


II.繰延税金資産の回収可能性の要件

繰延税金資産の回収可能性の要件には、以下の3つがあります。

1.収益力にもとづく課税所得の十分性

この要件は、将来減算一時差異の解消年度およびその解消年度を基準として税務上認められる欠損金の繰戻しおよび繰越しが可能な期間において、当該将来減算一時差異または税務上の繰越欠損金の解消額を十分吸収できる課税所得が発生する可能性が高いと見込まれなければならないというものです。

将来の課税所得は、過年度の納税状況および将来の業績予測等を総合的に勘案し、将来の合理的な予想利益に予想申告調整額を加減して合理的に見積る必要があります。ただし、繰延税金資産の回収可能性を判断するための将来の課税所得は、将来減算一時差異等の解消額を反映する前の課税所得です。

なお、将来減算一時差異の解消額が解消年度の課税所得を上回ったとしても、税務上の繰越欠損金の予測可能かつ合理的な繰越期間において十分な課税所得が見込まれるのであれば、回収可能と判断することができます。

2.タックスプランニングの存在

この要件は、含み益のある固定資産(土地)または有価証券を売却することなどにより、通常の事業活動とは別に将来の課税所得を発生させることで、当該課税所得が将来減算一時差異または税務上の繰越欠損金の解消額を十分に吸収できるかどうか検討することです。この場合、含み益を有する資産を保有しているだけでなく、当該資産の売却という具体的な計画等が存在していることが必要であり、実務上、取締役会等により機関決定された事業計画に反映されていることが必要です。

3.将来加算一時差異の十分性

この要件は、将来加算一時差異について繰延税金負債が計上されている場合に、将来の課税所得とは別に、その解消年度の解消額が将来減算一時差異または税務上の繰越欠損金の解消額を十分に吸収できるものであるかどうか検討することです。具体的には、解消額が合理的に計算できる圧縮対象の償却性資産や、税務上一定の期間で取り崩される特別償却準備金等が対象となります。


III.繰延税金資産の回収可能性の判断の手順

上記II.の判断要件の具体的適用手順は以下のとおりです。

1.

期末における将来減算一時差異について、将来解消見込年度のスケジューリングを実施し、解消時期と金額を特定します。

2.

期末における将来加算一時差異について、将来解消見込年度のスケジューリングを実施し、解消時期と金額を特定します。

3.

将来減算一時差異の解消見込額と将来加算一時差異の解消見込額とを、解消見込年度ごとに相殺します。

4.

3.で相殺し切れなかった将来減算一時差異の解消見込額について、その金額を解消見込年度を基に、その税務上認められる欠損金の繰戻しおよび繰越期間内の将来加算一時差異(3.で相殺後)の解消見込額と相殺します。

5.

以上の手順によっても残る将来減算一時差異の解消見込額については、その金額を将来年度の課税所得の見積額(タックスプランニングによる課税所得の発生見込額を含む)と、解消見込年度ごとに相殺します。

6.

5.で相殺し切れなかった将来減算一時差異の解消見込額については、その金額を解消見込年度を基に、その繰戻・繰越期間内の課税所得の見積額(5.で相殺後)と相殺します。

7.

以上、1.から6.の手続の結果、相殺し切れなかった将来減算一時差異に係る繰延税金資産については、その回収可能性がないと判断され、繰延税金資産から評価性引当額として控除されることとなります。


なお、将来加算一時差異が重要でない場合には、各年度における将来加算一時差異の解消見込額と課税所得の見積額とを合計して、将来減算一時差異の各年度の解消見込額と比較して判断することも、実務上は妥当なものとして取り扱われます。

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