企業経営に関するトピック解説

2005.02
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企業再生の実務〜企業再生から株主価値向上へ〜

企業再生の実務では、正確な現状把握を実施したうえで、再生戦略を限られた選択肢のなかで立案しなければなりません。この手法は、一般企業の企業価値向上戦略にも、そのまま転用可能と考えています。本稿では、企業再生から企業価値向上までについて、解説しています。


I.なぜ企業再生か

企業再生は、英語ではターンアラウンド(Turnaround)と呼ばれ、方向転換(考え・態度などの)変更、転向、業績・経済などの回復等を意味します。米国では、1980年代に経済が低迷したため、日本より10年以上早く、ターンアラウンドが流行しました。日本においてこの言葉が使われ始めたのは、1997年頃からです。

ここ10数年にわたる日本経済の低迷により、企業再生あるいは企業再建という言葉が、頻繁に聞かれるようになっています。バブル崩壊による土地および株式の価値の下落は、金融部門の貸付金の担保価値を大きく下落させ、景気の低迷による企業業績の悪化とあわせて、不良債権問題を発生させました。不良債権問題は、企業側からみれば過剰債務の問題であり、表裏一体の関係となっています。従来、企業にとって含み益として企業信用の中心であった株式と土地価格の下落は、企業に多額の含み損を抱えさせることとなりました。

また、金融ビッグバンの一環として、国内会計制度のグローバル化を目的に、世界的に通用する会計ルールの改革、いわゆる会計ビッグバンが平成12年3月期からスタートしました。会計ビッグバンは、企業グループ全体の土地、株式の含み損の処理、退職給付に代表される将来債務の認識により、日本企業のバランスシートに大きな変革をせまり、その影響は資本の部の悪化として端的に表れました。

このような過剰債務および資本不足のなかで、企業倒産が相次ぎました。 2000年4月から施行された民事再生法は、経済的に窮境にある債務者について,その事業再生を合理的かつ機能的に図るため,和議法に代わる新たな再建型倒産処理手続の基本法として制定されました。2000年4月から4年間で倒産した上場企業は約80社と言われますが、このうちの約70%の上場企業は、民事再生を申請しています。

法的手続のメリットは、過剰債務のカットによる財務リストラクチャリングです。しかし、企業再生においてもっとも重要なことは、事業再構築により事業の生み出すキャッシュ・フローの改善を図ることです。また、現在、ようやく景気動向に回復の兆しが見えつつありますが、企業再生における事業ポートフォリオの再構築手法は、企業の持続的な成長に必要不可欠といえます。


II.企業再生プロセス

企業再生のプロセスは、図表1のとおりです。このモデルは、(1)診断、(2)安定化、(3)再生戦略の策定、(4)実行計画の作成、(5)実行計画のモニタリングの5つのプロセスで構成されています。


企業再生プロセス

1.診断

診断は、たとえば人間ドックをイメージしてもらえれば、わかりやすいと思います。このプロセスでは、企業において、現在の厳しい財務状況を作り出している原因を短期間で把握します。つまり診断は、株主価値を下落させた、あるいは破壊させた経営戦略、業務プロセス、財政状態、組織上の問題点は何かを把握することです。このプロセスは、再生戦略立案の基礎となるため非常に重要です。

診断項目には、現在の戦略レビュー、組織構造と能力のレビュー、財政状態の判定、業務の有効性の評価等があります。なかでも、時価ベースの純資産とキャッシュ・フロー、有利子負債のレベルの把握は、非常に重要となります。診断項目の詳細は図表2のとおりです。

図表2■ 診断項目

項目

内容

現在の戦略レビュー

組織のビジョン/使命
ビジネスの範囲と組合せ:製品・市場・地域
独自の能力/資源
競争上の優位性
強みと弱み
産業としての魅力
競争上の地位
機会と脅威
内部および外部環境の調査結果と現在の戦略との整合性
株主価値増加手段の分析

組織の構造と能力のレビュー

組織文化
構造、システム、プロセス
経営能力と人的資源
適性と経験

業務上の有効性の評価

製品/市場
製品/市場の利益性の分析
バリューチェーンの分析
中心的活動についてのコストのベンチマーク
価格とコスト競争力を実現するための選択肢

財政状態の判定

利益性
バランスシート
キャッシュ・フロー
資本構成
株主価値増加手段と感度の分析
会社とビジネスの価値
株主価値の分析


診断の際の有力な分析手法として、ベンチマーキングがあります。

ベンチマーキングとは、ひとことで言えば「ベストな事例に学ぶ」ということで す。つまり、ベスト・プラクティス(経営や業務において、もっとも優れた実践方 法)を探し出して、自社のやり方とのギャップを分析し、そのギャップを埋めていく ためにプロセス変革を進める、という経営管理手法です。再生の診断は短期間 で実施されるため、同種企業あるいは、グループ内企業、企業内の事業部間のデ ータを徹底的に比較すると、対象企業の抱える問題点を把握しやすくなります。

対象会社としてスーパー、コンビニエンスストアに対して食料品を納入してい る会社を例にとります。経費を分析すると、大きな費目は人件費と物流費となっ ています。物流費を分析すると図表3のようになっています。

物流費率比較表

競合他社と比較すると売上高に占める物流費の高さが顕著です。この物流費の 構造を変革することができれば、大きくキャッシュ・フローのアップにつながります。

診断の結果、会社の問題点を把握し、改善のための方策を特定します。方策 のフレームワークの例としては、営業利益率の上昇、税金の節減、運転資本投資 の縮小、固定資本投資の合理化、資本コストの低減などがあります。

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