企業経営に関するトピック解説

2004.10
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会社法改正の方向性〜会社法制の現代化の解説〜

10月末に「会社法制の現代化に関する要綱案」が公表される予定です。その基本方針と、話題性が高いいくつかの項目について、それぞれの内容や提案のもととなった背景などを、わかりやすく説明します。


I.はじめに

1.改正の審議状況等

法務省の法制審議会会社法(現代化関係)部会ではかねてより、「会社法制の現代化に関する要綱案」(以下「要綱案」という)について検討を重ねてきましたが、すでに7月中に内容の実質的審議をほぼ終了し、最終的な調整をした後、10月末に要綱案を公表する予定です。要綱案の内容をもとに法案化され、平成17年春の通常国会での可決成立を目ざすこととなります。

本稿では、最近の部会における審査状況等をもとに、要綱案に織り込まれる予定の内容のうち、改正の基本方針と、話題性が高いいくつかの項目について、それぞれの内容や提案されることとなった背景などについて説明します。


2.「会社法制の現代化」がめざすもの

改正の基本方針

(1)

形式面での改正(わかりやすさの追求)

 

条文の片仮名文語体から平仮名口語体への変更、用語の整理、解釈の明確化、あるいは現在の商法第2編、有限会社法、商法特例法の各規定を1つの法典(会社法(仮称))としてまとめ再編成するなど、会社法をわかりやすくするために形式面での改訂を行うことが、現代化の基本方針の1つにあげられています。


(2)

実質的な改正

 

今回の改正は、ここ数年積み重ねられてきた改正の集大成的な位置付けとして、体系的、かつ、抜本的に会社法制度の見直しを行おうとするものです。要綱案では実質改正の内容を「会社に係る諸制度間の規律の不均衡の是正等を行うとともに、最近の社会経済情勢の変化に対応するための各種制度の見直し等「会社法制の現代化」にふさわしい内容の実質的な改正を行うものとする」と表現しています。


<諸制度間の規律の不均衡の是正>

近年において、会社法制は、短期間に多数回の改正が行われました。その中には議員立法による改正が含まれていたこともあり、諸制度間の規律の不均衡が発生し、諸制度間の整合性を図るための対応が必要とされていました。委員会等設置会社と監査役設置会社の取締役の責任や利益処分の権限の相違に対する調整などが、この例としてあげられます。また、「株式会社と有限会社の規律の一体化」や「会社財産の払戻しに対する横断的規制」なども、制度間の規律の不均衡を是正するための改正と位置付けることができます。

<社会経済情勢の変化への対応>

会社法はその国の経済力を高める重要なインフラであるといわれています。近年の会社法改正は、わが国の経済状況に対応し、経済界等からの強い要望があったファイナンス関係の一層の規制緩和、ストックオプションや自己株式取得の自由度の拡大などを優先的に行うとともに、よりよいコーポレート・ガバナンスが結果的には全体的な経済力を高めるとの考えをもとに、ガバナンスの選択肢の拡大と監督強化が行われてきました。今回の改正も従来の規制緩和、自由度の拡大などの基本的理念を維持しており、上記の事項に加え、国際的な対応をも含めた企業再編に関する選択肢の拡大や、会社設立時における最低資本金の規制緩和、実務界から要望のあった新しい会社形態(日本版LLC)の創設など、経済政策面への対応がより一層試みられているものと思われます。

また、社会の変化や実態に対処する事項として、新しい企業結合の会計基準への対応や、従来から商法の大きな課題であった株式会社の規律と実態との乖離の問題を解決するため、新しい株式会社制度の提案が行われています。

<情報開示の充実>

このように、今回の要綱案の内容も従来の改正に見られた規制緩和やビジネス上の選択肢の拡大の路線を引き継いでいますが、一方において、このようなさまざまな規制緩和等に対応して、情報開示を充実させることにより、株主や債権者等の利害関係者保護への配慮がなされていることも特徴の1つといえます。いわゆる「合併等対価の柔軟化」における対価の内容を相当とする理由の書面での開示、取締役会限りによる剰余金分配の確定制度における剰余金処分に関する理由書の開示や株主持分変動計算書の作成、また、後述するように、株式会社の機関設計等の規律に関して大幅な緩和が提案されているなかで、決算公告制度は維持されたことなどが、この例としてあげられます。なお、新たに提案された会計参与(仮称)の制度は、中小会社の情報開示の充実を促進する役割をも持っているものと思われます。


II.株式会社と有限会社の規律の一体化

1.現行の株式会社と有限会社を、1つの会社類型(株式会社)として規律する

現在、出資者である社員の有限責任が保障された会社形態として、有限会社と株式会社があります。株式会社に関する規律は大規模かつ公開的な会社を想定して厳格なものとなっており、有限会社の規律は閉鎖的な中小企業を想定し、株式会社のものと比べ緩やかな内容となっています。しかし、現実には日本の株式会社の大部分は小規模かつ閉鎖的であり、株式会社に関する規定の多く、たとえば、決算公告、附属明細書の作成などが守られておらず、さらに取締役会や監査役の監督が形骸化されるなど、法規制と実態が著しく乖離している状況が生じています。この状況を解決するために、従来から法制上の対応がなされてきましたが、依然として形骸化の状況は改善されたとはいえません。

要綱案では、このような実態を踏まえ、大部分の株式会社には現在の有限会社的な規律を適用するのが適当であることを正面から認め、株式会社の規律を緩やかな方向に広げることにより、有限会社の規律との一体化を図り、現在の株式会社と有限会社を1つの会社類型(株式会社)として規律することとしています。

なお、有限会社法は廃止されますが、現行の有限会社法にもとづいて設立された会社については、新しい会社法施行後も、「有限会社」の文字の使用も含め、現行の有限会社で認められている制度を将来にわたって利用できる措置がとられることになっています。


2.株式会社の機関設計の選択肢の拡大

1で述べたように株式会社と有限会社の規律を一体化した場合に、まず、端的に取り上げられるのが、機関設計のあり方です。現行の株式会社のうち、どのような考え方にもとづき、現行の有限会社型機関設計を許容するかの検討が行われました。要綱案では、株式会社を、まず、会社の閉鎖性、すなわち株式譲渡制限の有無で区分し、次に中小会社(現行の大会社以外の会社)か大会社かで区分し、さらに株式譲渡制限会社については、取締役会の設置の有無により分類することとしています(図表1参照)。

図表1 ■株式会社の分類
それぞれの分類により選択可能な機関設計は図表2のとおりです。機関設計は現在は原則として資本等の規模により規律されているため、選択肢はほとんどなかったのですが、有限会社型を認めることや、すべての中小会社で会計監査人等の設置を認めること、さらに会計参与の制度の導入などもあり、株式会社の機関設計の選択肢は大幅に拡大されます。

図表2■「株式会社の機関設計」について

(法制審議会現代化部会参考資料17より)

 

 

分類

 

株式譲渡制限中小会社

(図表1との対応)

(1)

 取締役

(A)

(2)

 取締役+監査役(注1)

(A)

(3)

 取締役+監査役+会計監査人

 

(A)

(4)

 取締役会+会計参与

 

(B)

(5)

 取締役会+監査役(注1)

(B)

(6)

 取締役会+監査役会

 

(B)

(7)

 取締役会+監査役+会計監査人

 

(B)

(8)

 取締役会+監査役会+会計監査人

(B)

(9)

 取締役会+三委員会+会計監査人

(B)

 

 

株式譲渡制限大会社

(1)

 取締役会+監査役+会計監査人

 

(C)

(2)

 取締役会+監査役+会計監査人

 

(D)

(3)

 取締役会+監査役会+会計監査人

(D)

(4)

 取締役会+三委員会+会計監査人

(D)

 

 

公開中小会社

(1)

 取締役会+監査役

(E)

(2)

 取締役会+監査役会

 

(E)

(3)

 取締役会+監査役+会計監査人

 

(E)

(4)

 取締役会+監査役会+会計監査人

(E)

(5)

 取締役会+三委員会+会計監査人

(E)

 

 

公開大会社

(1)

 取締役会+監査役会+会計監査人

(F)

(2)

 取締役会+三委員会+会計監査人

(F)


(注1)

定款により、監査役の権限を会計に関する事項に限定することも可能

(注2)

会計参与については、原則として、いずれの機関設計においても任意に設置可能

●は現在、有限会社で認められているもので、新たに株式会社にも認められるもの
◎は現在の株式会社で認められている機関設計
○は現在、中会社のみ認められているもので、新たに小会社にも認めるもの
無印は、今回の改正で新たに認められる機関設計

機関設計の主なポイント

 

(1)

株式会社の最低限必要な機関は、株主総会と取締役(1名でも可)です。

 

 

(2)

株式譲渡制限のない会社は、取締役会の設置が必須です。

 

 

(3)

取締役会を設置しない会社の機関の規律は、原則として、現在の有限会社のものが適用されます。たとえば、株主総会は、強行規定に反しない限り、いかなる事項についても決議することができます。

 

 

(4)

取締役会を設置する会社の機関の規律は、原則として、現在の株式会社のものが適用されます。

 

 

(5)

取締役会を設置した場合には、監査役(監査役会を含む)、会計参与(株式譲渡制限中小会社に限る)、または三委員会等(指名委員会、監査委員会、報酬委員会、執行役)のいずれかを設置しなければなりません。

 

 

(6)

大会社は、会計監査人の設置が必要です。


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