企業経営に関するトピック解説

2007.12
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企業再編・M&Aにおける退職給付制度について−退職給付制度をめぐる留意点− Page3

3.企業再編における財務面の課題と退職給付制度

(1)合併時の会計処理と退職給付引当金

2003年10月に企業結合に係る会計基準が制定され、合併時の会計処理は原則パーチェス法に統一されることになりました。これは2006年4月以降に合併する企業から適用されています。

会計基準の適用にあたり、一方の企業の「取得」なのか、「持分の結合」なのかを判定します。「持分の結合」と判定されれば持分プーリング法が適用され、簿価で引き継がれます。企業グループ内での企業結合は、共同支配下の取引であり「持分の結合」として簿価で評価されますが、第三者間の合併は「取得」と判定されるケースがほとんどと考えられます。「取得」と判定されればパーチェス法が適用されます。

パーチェス法の場合は、取得資産負債は時価評価されますので、退職給付債務(PBO)−年金資産(時価)=退職給付引当金となります。

図表2:合併時の会計処理

図表2:合併時の会計処理

(2)企業再編と退職給付引当金変動リスク

M&Aにあたって、貸借対照表上の退職給付引当金に反映されない以下のような未認識債務の変動リスク(PBO*1および年金資産の変動リスク)に注意する必要があります。

*1

PBO=Projected Benefit Obligation, 予測給付債務


(i)

PBO、年金資産が時価で再計算されること

(ii)

年齢構成、職務構成の変化に伴う昇給率や退職率の変化によって、平均残存年数および割引率などが変動し、PBOが増減すること

(iii)

グループ基金から離脱する場合は、分割方法に複数の選択肢があり、持込資産の多寡によって引当金が変化する可能性があること

これらは、いずれも定量的な数値であり、買収価格や合併比率に影響を与えることが考えられます。

図表3:企業の合併・再編と財務面の課題

図表3:企業の合併・再編と財務面の課題

4.企業再編時の退職給付制度に係る課題(まとめ)

M&Aにおける退職給付制度に関する課題を図表4にまとめました。

図表4:企業再編時の退職給付制度にかかる課題

財務面

人事面

企業再編時の会計処理により、どれくらいの費用が発生するか

企業再編により退職給付債務が大きくなり、変動リスクがどのくらい増加するか

退職給付制度を見直す場合、退職給付債務への影響はどうなるのか

給与・処遇制度の一本化に伴い、退職給付制度の見直しをしなければならないが、その時期や内容をどうすればよいか

既得権、期待権の問題をクリアしつつ、従業員の納得性の高い制度を構築するには、どうすればよいのか

労働法や、企業年金法による制約条件に対して、どのように対応すればよいのか


(1)財務面の課題

財務面では、企業再編において退職給付債務の変動リスク、年金資産の変動リスクを定量的に把握します。また、合併対象各社の年金制度の組合せパターンによっては、一部を解約する、または減額せざるを得ないという状況も考える必要があります。たとえば、A社に適格年金があり、存続法人であるB社に適格年金がない場合は、そのままではA社の適格年金はB社に引き継ぐことはできません。B社の制度が変更されない限り、A社の適格年金は解約せざるを得ないということになります。

制度変更を実施すると、既得権保証のための代替給付追加コストや割増退職金の発生など、通常のPBO計算では把握していない費用やキャッシュアウトが発生することがあります。

このようなM&A特有の事情を踏まえて、退職給付引当金を変動させるリスクを把握する必要があります。

(2)人事面の課題

人事面では、組織が統合され、まずは評価制度や給与制度の統一が優先され、その後時間をかけて(たとえば1年くらい)退職給付制度の統合を検討することになるでしょう。その際、おのおのの会社の制度が異なることが通常ですから、既得権、期待権の問題に配慮しつつ退職金の計算式、水準、経過措置などを検討します。条件の良いほうに一本化できれば問題はないのですが、給付減額を選択せざるを得ない状況の場合、就業規則の一部である退職金制度や企業年金に関する労働法、年金法の制約条件に対して専門家の助言を得ながら対応を考えることになります。

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