株式公開(IPO)に関する情報

2010.1.25

2009年のIPO動向について

1.IPO概況

2009年の新規上場会社数は前年同期比61%減(▲30社)の19社にとどまり、現在の新興3市場(ジャスダック、マザーズ、ヘラクレス)が実質的に整備された2000年以降で最少となった昨年の49社をさらに大きく下回る結果となりました。なお新規上場会社数がここまで落ち込んだのは、過去20年間でみても一度もなく、また2年連続で100社を割り込んだもの同様に初めてのこととなりました。

その主な要因としては以下の点などが挙げられると思います。

  • 上場予定企業の業績が悪化
    (2008年秋以降の急速な景気悪化の継続に伴い、上場企業でも業績が大幅に落ち込む中で、投資家に業績の成長性を示せる上場予定会社数が減少)
  • 株式市場の歴史的な低迷が継続
    (日経平均株価が26年ぶりの安値となった2008年10月の水準を昨年3月に再度割り込むなど、株式市場の歴史的な低迷が継続。その影響から新規上場時の公募価格のPERが低下し企業の資金調達額が相対的に減少となるなど上場メリットが低下)
  • 証券会社・証券取引所の審査が厳格化
    (新興上場企業の不祥事や上場後短期間での業績下方修正が相次いだことなどを受け、主幹事証券や証券取引所が特に業績見通しやガバナンス面などの審査を厳格化)
  • 上場予定企業の負担が増加
    (内部統制報告制度導入などにより、上場準備段階から人員面を含めた企業の上場負担が増加)

新規上場会社数を市場別で見ると、母数が前年比で大幅減となった影響を受けほぼすべての市場で減少となりました。主要市場で特に減少率が大きかったところでは、大証へラクレスが89%減、ジャスダックと東証マザーズはともに67%の減少となっています。その他、地方新興市場も振るわず、名証セントレックス、札幌アンビシャス、福岡Qボードへの上場は、昨年は1社も行われませんでした。一方、他市場が上場会社数を大きく減少させている中で、東証2部は前年と同数、NEOは前年比で1社増となるなど健闘が目立ちました。また昨年6月、東京証券取引所とロンドン証券取引所(英国)が合弁で開設したプロ投資家向けの新市場「TOKYO AIM」は、第一号の上場がまだ行われていない状況となっています。

各市場別の新規上場会社数については以下の通りです。

(最近5年間の市場別新規上場会社数)

(単位:社)

 

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

前年増減

IPO社数

158

188

121

49

19

▲30

東証1部

7

13

6

2

1

▲1

東証2部

11

16

7

5

5

±0

ジャスダック

65

56

46

18

6

▲12

NEO

3

1

2

+1

東証マザーズ

36

41

23

12

4

▲8

大証ヘラクレス

22

37

25

9

1

▲8

名証セントレックス

13

13

2

1

▲1

福岡Qボード

2

4

2

±0

札幌アンビシャス

1

4

5

1

▲1

その他

1

4

2

±0


新規上場企業の業種別内訳は以下の通りとなっています。

業種

社数

シェア

 

業種

社数

シェア

サービス業

3

15.8%

化学

1

5.3%

医薬品

3

15.8%

機械

1

5.3%

卸売業

2

10.5%

電気機器

1

5.3%

情報・通信業

2

10.5%

精密機器

1

5.3%

不動産業

2

10.5%

その他製品

1

5.3%

鉱業

1

5.3%

輸送用機器

1

5.3%


昨年は、新規上場会社数の減少幅と比較して、新規上場業種数の減少は小幅にとどまりました。(2007年20業種→2008年13業種→2009年12業種)

近年、新規上場会社の業種は、サービス、情報・通信、小売業の3業種が上位を形成してきましたが、昨年はその中で小売業が姿を消し、情報・通信業(▲11.9%)、サービス業(▲8.7%)も前年比でシェアを大きく低下させる一方で、医薬品が大きく上昇(+9.7%)となるなど、経済情勢に合わせた変化が出る結果となりました。

また、金融危機の影響もあってか、例年はいくつかある銀行、証券、保険など金融に関連する企業の上場は行われませんでした。個別では母数となる社数が少ないため前年との比較が難しい面がありますが、以下のキーワードに属する企業の上場などが注目されました。

(1)

「大型上場」

  • 日本海洋掘削(東1:石油・天然ガスの海洋掘削事業等)
  • 三菱総合研究所(東2:シンクタンク・コンサルティング及びITソリューション事業)
  • 一建設(J:戸建、マンション、土地分譲、請負工事等)

(2)

「医薬品、バイオベンチャー関連」

  • 大幸薬品(東2:一般医薬品及び感染管理製品の製造販売)
  • キャンバス(M:抗癌剤の研究・開発)
  • テラ(N:樹状細胞ワクチン療法等の独自技術・ノウハウの提供)
  • デ・ウエスタン・セラピテクス研究所(N:医薬品の研究開発)

(3)

「インターネット関連」

  • クックパッド(M:料理レシピ投稿・検索サイトの運営事業等)

この他、昨年のIPOの全体的な特徴としては、比較的社歴が長く、上場までの業績に安定感のある企業の上場が目立つ一方で、成長性を掲げるいわゆるベンチャー系企業の上場が減少となるなど、ここでも景気後退に伴う、上場予定企業の収益環境の厳しさが表れる結果となりました。

(注)

※ 東1・・・東証1部、東2・・・東証2部、J・・・ジャスダック、N・・・NEO、M・・・マザーズ


2.新規上場会社の分析

(1)売上高

2009年(1月〜12月)新規上場会社分布状況

東1

東2

JQ

NEO

マザーズ

ヘラクレス

名セ

札ア

〜10億円

 

2
(1)

2
(2)

 

 

 

4社
(3社)

〜20億円

 

 

1
(1)

 

1
(5)

 
(2)

 
(1)

2社
(9社)

〜30億円

 

 

 
(1)

 

 
(4)

1
 

1社
(5社)

〜40億円

 

 

 
(1)

 

 

 
(2)

 
(1)

 
(4社)

〜50億円

 

1
 

1
(2)

 

 


(1)

 

 

2社
(3社)

〜100億円

 

1
(1)

 
(3)

 

 

 
(2)

1社
(6社)

〜150億円

 

1
(1)

2
(4)

 

1
 

 
(1)

 

4社
(6社)

〜200億円

 

 
(1)

1
(1)

 


(1)

 

1社
(3社)

〜300億円

1
(1)

 
(1)

 
(2)

 

 

 
(1)

1社
(5社)

300億円
以上

 
(1)

2
(1)

1
(3)

 

 

 

3社
(5社)

合計

1
(2)

5
(5)

6
(18)

2
(1)

4
(12)

1
(9)

 
(1)

 
(1)

19社
(49社)

最小値
百万円

 
(29,727)

4,608
(8,520)

1,890
(1,794)

38
 

170
(103)

 
(1,255)

 

 

最大値
百万円

 
(178,379)

130,866
(95,607)

177,280
(75,427)

269
 

11,856
(19,988)

 
(26,310)

 

 

※中位値
    百万円

21,168
(104,053)

12,369
(16,099)

13,224
(11,150)

154
(405)

1,196
(1,523)

2,326
(4,310)


(3,712)


(1,443)

・( )内は2008年(1〜12月)数値
・直前決算期連結(連結なしの場合は単体)

中位値とは各市場上場企業数の上下真中順位企業の数値、複数ある場合は2社の平均

(売上高上位ランキング)

上場日

会社名

業種

市場

売上高(百万円)

12/25

一建設

不動産業

ジャスダック

177,280

6/25

八洲電機

卸売業

東証2部

130,866

9/14

三菱総合研究所

情報・通信業

東証2部

74,317

12/17

日本海洋掘削

鉱業

東証1部

21,168

12/24

ヤーマン

電気機器

ジャスダック

16,013

9/11

シーボン

化学

ジャスダック

14,305

6/23

常和ホールディングス

不動産業

東証2部

12,369

9/11

SHO-BI

その他製品

ジャスダック

12,143

11/20

エフオーアイ

機械

マザーズ

11,856

3/18

大幸薬品

医薬品

東証2部

5,541



(2)経常利益

2009年(1月〜12月)新規上場会社分布状況

東1

東2

JQ

NEO

マザーズ

ヘラクレス

名セ

札ア

赤字

 

 

1
(1)

1
(1)

 

2社
(2社)

〜5千万円

 

 

 

 
(1)

 

 


(1社)

〜1億円

 

 

 

1
 

 

 


(1)

1社
(1社)

〜2億円

 

 

 

 


(2)


(2)

 

 


(4社)

〜3億円

 

 

1
(2)

1
(4)


(4)


(1)

 

2社
(11社)

〜5億円

 

1
 

 
(2)

 

1
(2)

1
(1)

 

3社
(5社)

〜10億円

 

1
(2)

3
(9)

 

 

 
(1)

4社
(12社)

〜20億円

 


(2)

1
(3)

 

 
(2)

 

1社
(7社)

〜30億円

 

2
 

 
(1)

1
 


(1)

3社
(2社)

30億円
以上

1
(2)

1
(1)

1
(1)

 

 

3社
(4社)

合計

1
(2)

5
(5)

6
(18)

2
(1)

4
(12)

1
(9)


(1)


(1)

19社
(49社)

最小値
百万円

 
(9,768)

495
(510)

210
(202)

▲356
 

▲123
(▲727)

 
(120)

 

最大値
百万円

 
(10,630)

6,605
(10,921)

5,734
(25,021)

64
 

2,016
(1,051)


(2,475)

 

 

※中位値
    百万円

5,317
(10,199)

2,325
(1,178)

939
(666)

▲146
(▲270)

289
(244)

331
(272)


(223)


(83)

・( )内は2008年上半期(1〜12月)数値
・直前決算期連結(連結なしの場合は単体)

中位置とは各市場上場企業数の上下真中順位企業の数値、複数ある場合は2社の平均

(経常利益上位ランキング)

上場日

会社名

業種

市場

売上高(百万円)

9/14

三菱総合研究所

情報・通信業

東証2部

6,605

12/25

一建設

不動産業

ジャスダック

5,734

12/17

日本海洋掘削

鉱業

東証1部

5,317

6/23

常和ホールディングス

不動産業

東証2部

2,855

6/25

八洲電機

卸売業

東証2部

2,325

11/20

エフオーアイ

機械

マザーズ

2,016

9/11

シーボン

化学

ジャスダック

1,245

12/24

ヤーマン

電気機器

ジャスダック

982

3/16

小田原機器

輸送用機器

ジャスダック

896

9/11

SHO-BI

その他製品

ジャスダック

841



(3)資金調達額(公募)

2009年(1月〜12月)新規上場会社分布状況

東1

東2

JQ

NEO

マザーズ

ヘラクレス

名セ

札ア

〜3億円

 

1
(1)

1
(7)


(4)


(7)


(1)


(1)

2社
(21社)

〜5億円

 


(2)

1
(4)

1
 

1
(3)

1
 

 

4社
(9社)

〜10億円

 

1
(1)

1
(4)

1
(1)


(3)


(2)

3社
(11社)

〜20億円

 

1
(2)

 

2
(1)

 

3社
(3社)

〜30億円

 

1
 

 

 

 

1社

〜40億円

 

1
 

 

 

 
(1)

 

1社
(1社)

〜50億円


(1)


 

 
(1社)

〜100億円

1
(1)


 

1

 

1

3社
(1社)

〜200億円

 


(1)

 

 


(1社)

200億円
以上

 


 

 

 

合計

1
(2)

4
(5)

5
(17)

2
(1)

4
(12)

1
(9)


(1)


(1)

17社
(48社)

最小値
百万円

 
(4,700)

125
(143)

238
(68)

310
 

440
(50)


(90)

 

 

最大値
百万円

 
(5,925)

3,440
(10,200)

6,900
(1,375)

870
 

5,738
(3,960)


(670)

 

 

※中位値
    百万円

6,840
(5,313)

1,531
(450)

540
(400)

590
(957)

1,423
(350)

420
(180)


(195)


(100)

・ ( )内は2008年上半期(1〜12月)数値
・公募のみ(売出し及び公募未実施企業は含まず。公募価格×公募株式数で算出)

中位置とは各市場上場企業数の上下真中順位企業の数値、複数ある場合は2社の平均

(資金調達額(公募)上位ランキング)

上場日

会社名

業種

市場

資金調達額
(百万円)

12/25

一建設

不動産業

ジャスダック

6,900

12/17

日本海洋掘削

鉱業

東証1部

6,840

11/20

エフオーアイ

機械

マザーズ

5,738

6/23

常和ホールディングス

不動産業

東証2部

3,440

9/14

三菱総合研究所

情報・通信業

東証2部

2,200

12/24

ヤーマン

電気機器

ジャスダック

1,750

7/17

ユクックパッド

サービス業

マザーズ

1,501

9/17

キャンバス

医薬品

マザーズ

1,344

10/23

デ・ウエスタン・セラピテクス研究所

医薬品

NEO

870

3/12

大研医器

精密機器

東証2部

863



(4)初値時価総額

2009年(1月〜12月)新規上場会社分布状況

東1

東2

JQ

NEO

マザーズ

ヘラクレス

名セ

札ア

〜20億円

 

 


(5)


(1)


(2)


(1)


(1)


(10社)

〜30億円

 


(1)

1
(3)

1
(4)

 

 

2社
(8社)

〜50億円

 

1
(2)

1
(5)

1
 


(3)


(2)

3社
(12社)

〜80億円

 


(1)

1
(3)

1
(1)


(5)

2社
(10社)

〜100億円

 

1
 

1
(1)

1
(1)

3社
(2社)

〜200億円

 

2
 

1
 

 

1
(1)

 

4社
(1社)

〜300億円

 


 

 

 

2
 

 

2社
 

〜500億円

 


(1)

 

 

 


(1)


(2社)

〜1000億円

1
(2)

1
 

1
 

 

 

3社
(2社)

1000億円
以上

 


(1)


(1)


(2社)

合計

1
(2)

5
(5)

6
(18)

2
(1)

4
(12)

1
(9)


(1)


(1)

19社
(49社)

最小値
百万円

 
(52,487)

4,577
(2,729)

2,587
(1,317)

3,325
 

8,220
(1,839)


(1,584)

 

 

最大値
百万円

 
(62,232)

52,557
(42,495)

65,693
(204,960)

5,264
 

25,021
(111,510)


(35,202)

 

 

※中位値
    百万円

89,000
(57,360)

10,296
(4,514)

8,620
(2,808)

4,295
(5,282)

15,530
(6,496)

2,048
(2,520)


(820)


(400)

・( )内は2008年上半期(1〜12月)数値

中位値とは各市場上場企業数の上下真中順位企業の数値、複数ある場合は2社の平均

(初値時価総額上位ランキング)

上場日

会社名

業種

市場

初値時価総額
(概算:百万円)

12/17

日本海洋掘削

鉱業

東証1部

89,000

12/25

一建設

不動産業

ジャスダック

65,693

9/14

三菱総合研究所

情報・通信業

東証2部

52,557

7/17

クックパッド

サービス業

マザーズ

25,021

11/20

エフオーアイ

機械

マザーズ

20,592

6/23

常和ホールディングス

不動産業

東証2部

18,454

12/24

ヤーマン

電気機器

ジャスダック

12,253

9/17

キャンバス

医薬品

マザーズ

10,467

6/25

八洲電機

卸売業

東証2部

10,296

9/11

SHO-BI

その他製品

ジャスダック

9,475



3.今後のIPO市場の展望

2年連続で新規上場会社数が大きく落ち込んだIPO市場でしたが、個別企業の初値状況をみると、初値の公募価格割れが2008年の53%から、昨年は21%に改善となるなど、やや明るさが見える結果となりました。これは、(1)IPO社数の歴史的減少によって需給が改善したこと、(2)公募価格の水準が相対的に低めに設定された可能性があること、(3)収益基盤や成長見込みの高い企業の比率が高まったことなどが要因に挙げられると思います。

日本経済の不透明感は依然として強いものの、昨年12月の日経平均株価は月間上昇率が約14年ぶりの高水準となり、これを受け年間上昇率も3年ぶりにプラス(約19%)となるなど、米国や新興国の景気回復期待等の外需要因や経済対策を受け、出遅れ感の強かった日本経済にも改善の兆しが見え始めています。

しかしながら、IPO予定会社の多くは個人消費を中心とした内需型企業であることなどから推測すると、今後のIPO社数は昨年の19社を底として緩やかな回復には転ずるものの、本格的な回復に至るまでには、上場予定企業の業績向上を待つ期間が必要になってくるものと思われます。

IPOサポート室長 堀江 秀治

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