2007年のIPO動向について
2008.1.15
1.新規上場会社数の状況
≪概況≫
2007年の新規上場会社数は前年比36%減(67社)の121社となり、新興3市場が整備された2000年以降では、2003年と並んで最小となりました。新興上場企業の相次ぐ不祥事等を受け、主幹事証券や証券取引所が新規上場の審査を厳格化したことに加え、特に秋以降の新興市場の大幅調整に伴い、株価面を考慮し上場時期を延期する企業が相次いだことなども新規上場会社数の減少に拍車をかける形となりました。
昨年の株式市場は、日経平均株価の年間の変動幅が3,400円を超えるなど波乱の1年となりました。年前半は、米NYダウ平均が史上最高値を更新したことや円安傾向を背景に日経平均株価は堅調に推移し、7月には2000年以来7年ぶりの高値水準となる18,200円台を回復する場面もありました。しかし年後半には、米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に端を発した金融市場の信用収縮不安が再燃し投資家心理が悪化、11月には日経平均株価が心理的な節目と見られていた15,000円台を割り込み年初来安値を更新する展開となりました。
一方、IP0に関連性の深い新興市場でも、年末にかけて日経ジャスダック平均が年初来安値を更新するなど、日経平均株価同様年間を通じて冴えない展開が続きました。これらの影響を受けIPO銘柄に対する投資家の選別色が強まり、初値が公募価格を下回るケースが全体の24%(121社中29社)にも上り、前年との比較で13%の悪化となりました。
新規上場会社数を市場別で見ると、母数が前年比で大幅減少となった影響を受けほぼすべての市場で減少となりました。特に減少率が大きかったところでは、名証セントレックスが85%(11社)減、東証2部が56%(9社)減、東証1部が54%(7社)減、東証マザーズが44%(18社)減などとなっています。この他、減少幅が小さかったところでは、前年まで2年連続で減少していたジャスダックが18%(10社)減となっています。逆に増加したところでは、札幌アンビシャスが25%(1社)増、ジャスダックの新市場NEOに新たに3社の上場が行われました。各市場別の上場会社数については以下の通りとなっています。
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(最近3年間の市場別上場会社数) |
(単位:社) |
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2005年 |
2006年 |
2007年 |
前年比増減 |
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新規上場会社数 |
158 |
188 |
121 |
▲67 |
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ジャスダック |
65 |
56 |
46 |
▲10 |
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NEO |
− |
− |
3 |
+3 |
|
東証マザーズ |
36 |
41 |
23 |
▲18 |
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大証ヘラクレス |
22 |
37 |
25 |
▲12 |
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東証1部 |
7 |
13 |
6 |
▲7 |
|
東証2部 |
11 |
16 |
7 |
▲9 |
|
名証セントレックス |
13 |
13 |
2 |
▲11 |
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福岡Qボード |
2 |
4 |
2 |
▲2 |
|
札幌アンビシャス |
1 |
4 |
5 |
+1 |
|
その他 |
1 |
4 |
2 |
▲2 |
新規上場企業の業種別内訳は以下の通りとなっています。
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業種 |
社数 |
シェア |
業種 |
社数 |
シェア |
|
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サービス業 |
28 |
23.1% |
精密機器 |
2 |
1.7% |
|
|
情報・通信業 |
22 |
18.2% |
証券・商品先物業 |
2 |
1.7% |
|
|
小売業 |
16 |
13.2% |
倉庫・運輸関連業 |
2 |
1.7% |
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|
不動産業 |
13 |
10.7% |
その他金融業 |
2 |
1.7% |
|
|
電気機器 |
7 |
5.8% |
建設業 |
2 |
1.7% |
|
|
機械 |
6 |
5.0% |
輸送用機器 |
1 |
0.8% |
|
|
卸売 |
4 |
3.3% |
医薬品 |
1 |
0.8% |
|
|
化学 |
4 |
3.3% |
銀行業 |
1 |
0.8% |
|
|
金属製品 |
3 |
2.5% |
保険業 |
1 |
0.8% |
|
|
その他製品 |
3 |
2.5% |
非鉄金属 |
1 |
0.8% |
昨年も新規上場企業の業種は多岐にわたりましたが、サービス業、情報・通信業、小売業の上位3業種の順位は変わらず、全体に占めるシェアもこの3業種で55%と前年との比較でほぼ横ばいとなっています。その他シェア上昇で目立ったところでは、電気機器(+2.6%)、不動産業(+2.2%)、化学(+1.7%)などとなっています。逆に卸売業は、前年比でシェアを大きく減少(▲5.2%)させています。
個別企業では以下のキーワードに属する企業の上場などが注目されました。
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(1) |
「大型上場」 |
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(2) |
「情報・通信関連」 |
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(3) |
「IT・ネット関連」 |
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(4) |
「電機機器関連」 |
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(5) |
「外食・小売関連」 |
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(6) |
「業界初のIPO、ニュービジネス」 |
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(7) |
「中国本土系企業の上場」 |
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(注) |
※ 東1・・・東証1部、東2・・・東証2部、JQ・・・JASDAQ、JN・・・NEO、M・・・マザーズ、HC・・・ヘラクレス |
2.新規上場会社の概況
(1) 売上高
≪ポイント≫
新興3市場の中位値を前年と比較すると、マザーズが50%増加、ヘラクレスも11%の増加となりましたが、ジャスダックは逆に20%の減少となりました。その他目立ったところでは、大型上場や子会社上場が減少した影響などから、東証1部が38%減少、東証2部も25%の減少となっています。
分布状況では、売上高が30億円以下の企業は全体の35%で、前年(40%)との比較で小規模企業の上場が減少していることが分かります。また反対に売上高が200億円以上の企業は、東証1・2部、ジャスダックを中心として全体の15%(前年比7%減)となっていて、昨年の上場企業は売上高が中規模のレンジに集中する傾向が強くなりました。
※ 文中数値は概算
2007年(1月〜12月)新規上場会社売上高分布状況
直前決算期連結(連結なしの場合は単体)
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※ |
中位値とは各市場上場企業数の上下真中順位企業の数値、複数ある場合は2社の平均 |
(2) 経常利益
≪ポイント≫
新興3市場の中位値を前年と比較すると、ヘラクレスが77%と大幅に増加、逆にジャスダックは20%の減少、マザーズも11%の減少となりましたが、マザーズは直前決算期が赤字で上場した企業3社のうち2社については、申請期中間期時点での黒字転換を確認後の上場となっているため、実質的には前年とほぼ同水準となっています。
分布状況では、経常利益3億円以下の企業は全体の42%となっていて、前年比でわずかながら(2%)減少しています。この他、赤字で上場した企業は5社となり、前年比で4社増となっています。一方、利益規模の大きなところでは、経常利益10億円以上で上場した企業は東証1・2部、ジャスダックを中心として全体の16%(前年比8%減少)に留まっていて、売上高同様こちらも中規模のレンジに数値が集中する結果となっています。
※ 文中数値は概算
2007年(1月〜12月)新規上場会社経常利益分布状況
直前決算期連結(連結なしの場合は単体)
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※ |
中位値とは各市場上場企業数の上下真中順位企業の数値、複数ある場合は2社の平均 |
(3)資金調達額(公募)
≪ポイント≫
上場時の資金調達額(公募)が5億円以下であった企業は全体の48%にも上り、前年比で17%の大幅増となっています。10億円以下の企業は全体の68%(前年比6%増)にとどまっていることや、(2)の経常利益の下値水準が切り上がっていることなどを考慮すると、昨年は新興市場相場の低迷を受け、公募価格決定段階で主幹事証券がPERを低めに設定した影響がIPO時の資金調達額に出ているものと思われます。一方、資金調達額が大きなところでは、前年は2社あった1,000億円以上の超大型上場が昨年は1社もなく、50億円以上となった企業も前年比で3%の減少となっています。またIPO時に公募増資を行わなかった企業が4社ありました。
※ 文中数値は概算
2007年(1月〜12月)新規上場会社資金調達額(公募)分布状況
公募のみ(売出し及び公募未実施企業は含まず。公募価格×公募株式数で算出)
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※ |
中位値とは各市場上場企業数の上下真中順位企業の数値、複数ある場合は2社の平均 |
(4)初値時価総額
≪ポイント≫
IPOの中心となる新興3市場の株価指数が、年間を通じて軟調に推移した影響などを受け、初値時価総額の中位値は前年比で各市場とも減少となりました。主要新興市場の中で減少幅が大きかったところでは、ヘラクレスが54%、ジャスダックが47%、マザーズが46%などとなっています。
初値時価総額が大きなところでは、500億円以上の企業が全体の4%と前年比で9%の大幅減となった他、1,000億円以上の超大型上場は前年比11社減のわずか2社にとどまっています。一方、初値時価総額の小さなところでは、50億円以下の企業が全体の40%を占めるなど(前年比22%増)、ここでも株価低迷の影響が出てきています。また過去2年同様、売上高・経常利益の水準がともに低いマザーズ上場企業の初値時価総額の中位置が、ジャスダック上場企業の中位置を30%程上回っています。
※ 文中数値は概算
2007年(1月〜12月)新規上場会社初値時価総額分布状況
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※ |
中位値とは各市場上場企業数の上下真中順位企業の数値、複数ある場合は2社の平均 |
3.今後のIPO市場の展望
2007年の株式市場は、日経平均株価が年間で11%の下落にとどまる一方で、日経ジャスダック平均株価が19%、東証マザーズ指数は29%、大証ヘラクレス指数は35%の下落となるなど、流動性の低い中小型株の投資家離れの動きが一段と強まる展開となりました。新興市場では2006年1月のライブドア事件以降も、突然の業績下方修正や不透明な会計処理に加え、企業統治に関する事件等が相次いだことなどにより、2年連続で低迷の一年を終えることとなりました。IPOを志向する企業は依然として少なくはないものの、今年以降のIPO展望をした場合、以下の要因などが懸念材料として浮上して来ています。
- 新興市場の低迷長期化に伴う経営者のIPOマインドの低下
- 成長期待企業の減少
- 証券会社、証券取引所等の上場審査の一層の厳格化
- 東証マザーズの上場基準等の変更(実質強化)
- 金融商品取引法に基づく内部統制報告制度(J-SOX)導入に伴う公開準備作業の負担増加懸念
- 2000年以降IPO市場の舞台装置として機能してきた新興3市場体制に変化が起きる可能性(大証、ジャスダックの統合など新興市場再編問題)
以上の要因等を勘案し、かつ株式市場に重大な影響を及ぼす事件等が無いと仮定した場合、2008年の新規上場会社数は、昨年より15〜25%程度減少する事が予想されます。
いずれにしても新興3市場が整備された2000年以降、主に「株価(好需給)」と「成長期待」に支えられ高水準で推移して来た大量IPO時代も、ひとつの転換期を迎えたと言えると思います。しかしIPOを取り巻く昨今の情勢の変化は、真に実力のある企業のIPOを妨げるものではなく、その意味においては、上場予定企業、関係者、投資家等に、IPOする本来の意義というものの再考を促すきっかけとなるものかも知れません。
IPOサポート室長 堀江 秀治
