あずさ監査法人

2007年上半期のIPO動向について

2007.7.23

1.新規上場会社数の状況

≪概況≫

2007年上半期の新規上場会社数は、上半期ベースで史上最多(93社)となった昨年比で20社減(22%減)の73社となりました。上半期の新規上場会社数が前年の実績を下回るのはITバブル崩壊以降4年ぶりのこととなります。

市場別で見てみると、母数が減少した関係でほぼすべての市場で新規上場会社数が減少となりましたが、その中でも東証マザーズは1社増、その他札幌アンビシャスも昨年上半期比で2社増となりました。逆に減少幅が大きかったところでは大証へラクレスが7社減、その他東証2部が6社減、東証1部が3社減、名証セントレックスも2社減となっています。各市場別の上場会社数については以下の通りとなっています。

(市場別上場会社数)

(単位:社)

 

2006年上半期

2007年上半期

(増減)

新規上場会社数

93

73

▲20

JASDAQ

33

32

▲1

東証マザーズ

14

15

+1

大証ヘラクレス

22

15

▲7

東証1部

5

2

▲3

東証2部

10

4

▲6

名証セントレックス

3

1

▲2

福岡Qボード

1

▲1

札幌アンビシャス

2

4

+2

大証2部

2

▲2

名証2部

1

▲1



新規上場企業の業種別内訳は以下の通りとなっています。

業種

社数

シェア

 

業種

社数

シェア

情報・通信業

19

26.0%

精密機器

1

1.4%

サービス業

18

24.7%

医薬品

1

1.4%

小売業

8

11.0%

化学

1

1.4%

電気機器

7

9.6%

銀行業

1

1.4%

不動産業

3

4.1%

非鉄金属

1

1.4%

機械

3

4.1%

証券・商品先物業

1

1.4%

卸売業

3

4.1%

輸送用機器

1

1.4%

その他製品

2

2.7%

倉庫・運輸関連業

1

1.4%

その他金融

2

2.7%


今年上半期も新規上場企業の業種は非常に幅広くなっています。上位では前年2位の情報・通信業が前年首位のサービス業を抑えてトップに返り咲きましたが、この2業種で全体の51%(前年は43%)を占めていてやや集中する傾向を見せています。その他では卸売、小売業等が減少する一方で、電気機器の増加が目立っています。

個別企業では以下のキーワードに属する企業の上場などが注目されました。

(1)

「大型上場」

  • テイ・エステック(東1:四輪車及び二輪車用シート、四輪車用内装等製造・販売)
  • 八千代銀行(東1:銀行業)
  • アートネイチャー(JQ:かつら製造・販売等総合毛髪関連事業)
  • ニューフレアテクノロジー(JQ:半導体製造装置の開発・製造・販売)
  • ユー・エス・ジェイ(M:テーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの運営) など

(2)

「情報・通信関連」

  • サイバーコム(JQ:通信系分野を中心としたソフトウェアの受託開発等)
  • フリービット(M:インターネット接続業者へのインフラ提供等)
  • インフォテリア(M:XML技術を基盤としたデータ連携のソフトウェア開発等)
  • エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマート(M:Webシステム基盤構築パッケージソフトウェア開発等)
  • ネクストジェン(HC:次世代通信網に関わるソフトウェア開発・販売等) など

(3)

「IT・ネット関連」

  • ケアネット(M:製薬企業向け医薬営業支援サービス、医師向け医療コンテンツ提供等)
  • カービュー(M:自動車総合専門サイト運営によるインターネット広告事業)
  • アイティメディア(M:IT系総合情報サイト運営によるインターネット広告事業)
  • ウェブドゥジャパン(HC:IT関連の業務受託・請負、携帯に特化した広告業等)
  • ストリーム(M:パソコン及び家電等のインターネット通販サイト運営事業等) など

(4)

「電機機器関連」

  • コンテック(東2:産業用向けの電子機器及び関連機器の開発、製造、販売)
  • 寺崎電気産業(JQ:船舶用・産業用配電制御システム、低圧遮断器等の製造・販売)
  • シスウェーブ(JQ:LSI開発の受託及びLSI等のテスト関連のシステム開発)
  • ミマキエンジニアリング(JQ:業務用広幅プリンタ等の製造・販売)
  • ネットインデックス(JQ:通信関連機器の開発・製造・販売等) など

(5)

「外食・小売関連」

  • 銚子丸(JQ:グルメ回転寿司)
  • ホリイフードサービス(JQ:北関東エリアを中心とした外食事業の展開)
  • ゴルフパートナー(M:中古クラブ買取販売事業等)
  • ダイヤモンドダイニング(HC:多業態(マルチコンセプト)飲食店の経営)
  • ジェーソン(HC:バラエティストア業態店舗の運営等) など

(6)

「業界初のIPO、ニュービジネス」

  • アジア・メディア・カンパニー・リミテッド(M:中国本土系企業として初のIPO)
  • イー・キャッシュ(M:RFID(ICチップ、ICカード、ICタグ)事業、決済代行事業)
  • UBIC(M:コンピュータ不正調査、米国訴訟における電子データ証拠開示支援等)
  • タケエイ(M:建設廃棄物等の再資源化を中心とした環境ソリューション事業等)
  • エヌ・ピー・シー(M:太陽電池製造装置・真空包装機の開発・製造・販売等)
  • マネーパートナーズ(HC:外為証拠金取引専業会社としては初のIPO) など

(注)

※東1・・・東証1部、東2・・・東証2部、JQ・・・JASDAQ、M・・・マザーズ、HC・・・ヘラクレス
※重複上場の場合、上場市場は東証→大証→名証の優先順位で表記(以下同様)

2.新規上場会社の概況

(1) 売上高

≪ポイント≫

IPOの中心である新興3市場の中位値を昨年上半期と比較すると、ジャスダック(昨年7,896百万円)とヘラクレス(昨年2,367百万円)については昨年とほぼ同水準となったものの、マザーズについては大幅増(142%)となっています。

全体の分布状況では、売上高が30億円以下の小規模企業の割合が昨年上半期比で4%低下、個別でもマザーズでこのレンジの割合が昨年の79%から47%に低下するなど、全体的に下値水準は切り上がる傾向にあります。また反対に規模の大きなところで、売上高が200億円以上の企業は、東証1・2部、JASDAQを中心として全体の16%と昨年上半期比で8%低下しています。

※ 文中数値は概算



2007年(1月〜6月)新規上場会社売上高分布状況


>>図表を拡大する


直前決算期連結(連結なしの場合は単体)

中位値とは各市場上場企業数の上下真中順位企業の数値、複数ある場合は2社の平均

(2) 経常利益

≪ポイント≫

新興3市場の中位値を昨年上半期と比較すると、JASDAQは18%減少となりましたが、マザーズは73%、ヘラクレスでは95%の大幅増加となっています。

全体の分布状況では、経常利益2億円以下の企業の割合は昨年上半期比で4%減少する一方で、経常利益5億円以下の割合は逆に7%上昇するなど、こちらも売上高同様、全体的に下値の水準が切り上がる傾向にあります。一方、利益規模の大きなところでは、今年上半期は東証1・2部を中心としたいわゆる大型上場が少なかった関係もあり、経常利益10億円以上で上場した企業は全体の14%にとどまり、昨年上半期比で8%の減少となっています。

※ 文中数値は概算



2007年(1月〜6月)新規上場会社経常利益分布状況


>>図表を拡大する


直前決算期連結(連結なしの場合は単体)

中位値とは各市場上場企業数の上下真中順位企業の数値、複数ある場合は2社の平均

(3)資金調達額(公募)

≪ポイント≫

今年上半期に上場時の資金調達額(公募)が5億円以下であった企業は全体の45%となり、昨年上半期比で15%の大幅増加となりました。しかし一方で、資金調達額が10億円以下の企業の割合は昨年とほぼ同水準となっており、小規模企業の上場が例年との比較でより多かったことを物語っています。またもう一つの要因としては、低迷する新興市場の影響を受け公募価格が全体的に低めに設定された可能性も挙げられます。

一方、資金調達額(公募)が大きなところでは、調達額が30億円以上の割合は全体の10%で昨年上半期とほぼ同水準となっています。この他、IPO時に公募増資を行わなかった企業が2社ありました。

※ 文中数値は概算



2007年(1月〜6月)新規上場会社資金調達額(公募)分布状況


>>図表を拡大する


公募のみ(売出し及び公募未実施企業は含まず。公募価格×公募株式数で算出)

中位値とは各市場上場企業数の上下真中順位企業の数値、複数ある場合は2社の平均

(4)初値時価総額

≪ポイント≫

IPOの中心となる新興3市場の株価指数が年初から低迷した影響もあり、初値時価総額の中位値は昨年上半期比で各市場とも総じて大幅減となっています。主要市場の中で減少幅が大きかったところは、ヘラクレスが47%、ジャスダックが40%、マザーズが32%などとなっています。その様な厳しい状況の中、マザーズでは初値時価総額100億円以上の割合が60%と他の新興市場(ジャスダック31%、ヘラクレス13%)を大きく引き離しています。また初値時価総額が大きなところでは、300億円以上の割合が11%と昨年上半期比で11%減少、500億円以上の企業も4%にとどまり9%減少しています。この他、1,000億円以上の超大型上場は昨年上半期比3社減の1社となっています。

※ 文中数値は概算



2007年(1月〜6月)新規上場会社初値時価総額分布状況


>>図表を拡大する


中位値とは各市場上場企業数の上下真中順位企業の数値、複数ある場合は2社の平均


3.今後のIPO市場の展望

2007年上半期の株式市場は、好調な企業業績や米国株高などを背景に東証1部市場を中心とした大型株が堅調な動きを見せる中、新興市場は5月に東証マザーズ指数が指数算出以来の安値を更新した他、6月にはジャスダックなどの各市場の売買代金が実質今年最低を記録するなど厳しい状況が続きました。昨年から継続している新興市場を中心とした中小型株の業績に対する投資家の警戒感は依然として根強く、浮上のきっかけを掴めないまま今年上半期を終了する形となりました。

IPOを志向する企業は引き続き多いものの、以下の理由などからIPOを取り巻く環境に今後変化が起きる可能性があります。

  • 2006年から続く新興市場相場の低迷、成長期待業種の減少
    IPO時の銘柄選別に影響
  • IPO後、短期間での業績下方修正などによりIPO企業の情報開示への不信感の増加
    証券会社、各証券取引所の上場審査厳格化によるIPO企業の選別・上場時期の遅延等
  • 日本証券業協会が新規上場時の引受審査項目の見直しを公表
    大手証券と中小証券の引受審査基準の格差が解消(7月から実質的に審査強化)
  • 来年に迫った、上場会社に対するJ-SOXの導入
    IPO企業も上場準備段階で内部管理体制のより一層の充実が求められる可能性

一方で、増加要因としては以下の点などが想定されます。

  • ジャスダック証券取引所が今秋以降に先端技術系企業向け新市場「NEO」を開設(予定)
  • 今年上半期に初めて行われた中国本土系企業のIPOが続く可能性
  • 投資ファンド等が出口戦略としてIPOを選択する可能性

いずれにしてもここ数年続いた大量IPO時代の転換点に差し掛かっている可能性は高いものと思われます。しかしこの事は今後、より厳しい審査をクリアしてIPOすることで企業価値が更に上昇する時代への幕開けとなるかも知れません。

IPOサポート室長 堀江 秀治