あずさ監査法人

子会社上場について

2007.05.07

上場親会社の子会社が上場する、いわゆる「子会社上場」は日本特有であると言われていますが、一方で、ここ最近は上場子会社を株式交換等の手法を用いて完全子会社化することにより「親子上場」をやめるケースが増えています。子会社が上場する場合の留意点を簡潔に踏まえたうえで、子会社上場のメリット・デメリットと今後の動向を考察いたします。

1. 子会社上場の留意点

子会社は、一般的に親会社等を中心とした企業グループからの影響を受け、親会社等の意思により事業活動が左右されることとなります。このような子会社が株式上場した場合、親会社等の利益を優先する結果、一般株主の利益が阻害される危険性が生じてきます。そこで、子会社上場にあたっては、審査上一定の基準を設け、親会社等からの独立性などを一般株主の利益保護の観点から審査することとなっています。審査のポイントは以下のとおりです。

(1)

子会社上場にあたっては、通常の審査に加え、親会社等からの独立性、事業基盤の安定性等について十分な審査が行われます。

特に、親会社等との事業上の関係についての要件が以下のように明確化されています。

  • 上場申請会社または親会社等が一方の不利益になる取引行為を不当に強制し、または誘引していないこと
  • 上場申請会社と親会社等が、通常の取引の条件と著しく異なる条件で取引を行っていないこと
  • 上場申請会社が事実上、親会社等の一事業部門と認められる状況にないこと

(2)

取引所上場審査では、原則として親会社等が上場会社または継続開示会社であることを求めています。

(3)

JASDAQ上場審査では、親会社等が非上場会社(非継続開示会社)であっても、一定の要件のもとに上場が認められる場合もあります。

(4)

少数特定者持株数にかかわる上場審査基準の緩和措置が廃止されました。

2. 子会社上場のメリット・デメリットと最近の動向

子会社上場においては、親会社および子会社の双方のメリット・デメリットを総合的に考慮することが必要ですが、一般にはそれぞれ以下のようなメリット・デメリットが考えられます。

 

メリット

デメリット

親会社

多額の資金調達

保有有価証券の含み益の実現

担保価値増加による資金調達能力の増大

子会社の体質改善

子会社に対する人的及び資金的な負担軽減

経営権の安定性低下

子会社の独立性増加

グループ内情報のディスクロージャー

子会社

親会社からの独立性確保

従業員のモラール向上

自己資本の充実

親会社への依存度低下

事務コストの増大


「子会社上場」は相変わらず多く、親会社にその他の関係会社も含めた場合、子会社上場は全IPOの30%前後で推移しています。一方で、株式交換・株式移転制度の会社法・税制面での整備を背景に、事業の選択と集中がより強く意識されるようになったことから親会社による完全子会社化のケースも急増しています。

3. 今後の動向

(1)

少数株主の利益保護の強化

親会社の一方的なグループ再編により一般株主の利益が阻害されることを抑制するひとつの方策として、有価証券報告書等の「事業等のリスク」において親会社の株主としての方針を開示するケースが数多く見受けられるようになりました。

(2)

パーチェス法

企業結合に係る会計基準の制定により、子会社株式の取得はパーチェス法の適用が原則となりました。これにより完全子会社化によるのれんが多額に発生するケースでは、その償却費負担が課題になります。親会社の完全子会社化の増加が鈍化する可能性があります。

(3)

三角合併

三角合併(消滅会社の株主に存続会社の親会社の株式を交付する)の解禁に伴い、親会社以外の内外の会社による完全子会社化が増加することが予想されます。

公認会計士 伊藤 肇