株式公開(IPO)に関する情報

2007.03.26

新会社法と公開準備会社の留意点(6)−定款変更の実務−

定款は、会社の目的、組織及び会社運営に関する根本規則であり、会社自らの行動を規定するものです。平成18年5月から施行されている会社法では、従来の商法に比べ、定款の記載内容の自由度を高め、会社の自主性を高めようとした改正が行われています。そのため、定款の記載事項を見直し、会社法に適応した定款に変更することが必要になります。

とりわけ上場準備会社では、後述のとおり、会社法への対応に加え、株式の流通や企業内容の開示に関する観点から、株式上場の申請時までに、上場会社に適合した定款への変更が必要になります。


I. 会社法の施行に伴い定款の見直しを必要とする事項

会社法施行に伴い定款への記載事項が変更されましたが、その特徴として、絶対的記載事項が一部任意的記載事項になっているように、定款に記載することによって効果が生じる項目が増加していることがあげられます。会社法の施行に伴い見直しを必要とする主な事項は以下のとおりです。

(全国株懇連合会モデルから抜粋)

項目

内容

(通則)

機関

会計監査人が機関として設定されたほか、機関設計が会社の裁量により選択可能であることから定款で機関設計を規定する。

株券の発行

株券不発行が原則となったので、株券を発行する場合には、その旨の定款の定めが必要となった。

名義書換代理人

名義書換代理人は、会社法で株主名簿管理人へ名称が変更となる。

(株主総会)

招集地

商法は別段の定めがなければ、本店所在地及びその隣接地であったが、制限撤廃から、招集地を限定するため規定を設置する。

定時株主総会の基準日

通則の基準日設定から移動させている。

株主総会参考書類等のインターネット開示とみなし提供

定款に定めることを条件として、株主総会の招集に際し、株主総会参考書類等をインターネットを利用する方法で開示した場合、株主に対して提供したものとみなすことができ、株主への郵送が必要なくなる。

(取締役及び取締役会)

任期と剰余金の配当等

会計監査人設置会社は、取締役の任期を1年とするなど一定の条件の下に剰余金の配当を取締役会が決定することができる旨を定款で定めることができる。取締役の任期を2年とした場合には、剰余金の配当等を取締役会が定めることはできない。

報酬

取締役の報酬(報酬、賞与その他)について、その形態に応じて確定金額、算定方法または具体的な内容を定款または株主総会決議をもって定めなければならない。

(監査役及び監査役会)

監査役の責任免除

社外監査役が職務につき善意かつ重大な過失がない時は、あらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額のいずれか高い額を限度とする旨の契約を締結することができる旨を定款で定めることができる。

(会計監査人)

会計監査人の設置

株式会社は、定款の定めで会計監査人を置くことができるほか、大会社は会計監査人を置かなければならない。

員数等

会計監査人が株式会社の機関として設定される場合、定款では、員数、選任方法、任期、報酬等、会計監査人の責任免除、会計監査人の責任限定契約等を定める。

(計算)

剰余金の配当等の決定機関

取締役の任期の末日が選任後1年以内であり、会計監査人及び監査役会設置会社である場合は一定の条件の下、剰余金の配当等を取締役会決議で実施することができる。



II. 上場に伴い定款の見直しを必要とする主な事項

株式上場に伴い定款の見直しを必要とする主な事項は以下のとおりです。

事項

検討事項

変更時期

公告の方法

官報による方法から日刊全国紙への変更(電子公告にすることも可能)

株式上場の申請期まで(直前期の定時株主総会または上場申請期の臨時株主総会)

発行可能株式総数

上場後の増資に備え発行可能株式の枠の拡大

同上

株式の譲渡制限

株式譲渡制限の削除が必要

同上

株式事務代行機関の設置

審査基準で要請されているため、株主名簿管理人の設置が必要

同上


また、会社法では、機関設計が多様な選択肢の中から自社にあった機関設計が可能ですが、株式上場を目指している場合には、株式公開後の機関設計を視野に入れ、上場準備をすることが望ましいといえます。

なお、上場に当たっては、上表のとおり、株式事務代行機関の設置が必要となります。そこで、公開準備会社については、早期に信託銀行や証券代行会社を選定するとともに会社法への対応にもれがないように相談しておくことも実務的な対応としては考慮に入れておく必要があります。


III. 定款変更の手続

定款変更は、株主総会の特別決議が必要であり、総株主の議決権の過半数にあたる株式を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上の多数をもって決議する必要があります。定足数については、定款の定めにより、議決権の3分の1以上の割合まで緩和することができるようになりました。

公認会計士 大野 崇

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