あずさ監査法人

新会社法と公開準備会社の留意点(5)−企業組織再編−

2007.02.26

上場準備会社は、上場準備の初期の段階において、グループ会社を再編し、収益体質の強化とビジネスプランの絞込みを図ることが一般的です。したがって、企業組織再編は上場準備会社の重要なテーマとして上場準備を始めるにあたって検討しておく必要があります。今般の会社法の制定により、上場を志向する会社において組織再編が円滑になされるような立法措置がとられることとなり、また、税法も改正されて利用価値の高い制度となっています。

I. 会社法における企業再編の制度

1. 会社法における合併対価の柔軟化

会社法は、事業の再構築の必要性や買収・事業統合等を含む企業活動の国際化の流れを考慮し、企業価値向上のための組織再編行為の選択肢を増やす必要性等を考慮し、吸収分割、株式交換と共に吸収合併において対価を柔軟化し、消滅会社の株主に対して、存続会社の株式だけでなく、金銭その他の財産を交付することを認めることとしました(749条1項2号、751条1項3号)。ただし、会社法施行後1年は、合併の対価は株式に限定されます(会社法附則4項)。

2. 合併の対価にはどのようなものが認められるか

会社法は、対価について金銭その他の財産であれば足りるとしています(749条1項3号、751条1項3号)。ただ、その対価は消滅会社株主に株式数に応じて交付するので(749条3項、751条3項)、それに適した財産である必要はあります(社債や新株予約権でもよいわけです)。ただ、対価として選択された財産によって、消滅会社の手続に異なる点があることは注意が必要です。

すなわち、(1)消滅会社が種類株式発行会社でない場合、原則株主総会の特別決議が必要であり、例外として対価が譲渡制限株式等であるときは特殊決議、対価が持分会社の持分等であるとき総株主の同意が必要です。また、(2)消滅会社が種類株式発行会社である場合、原則特別決議が必要であることは同じですが、例外として対価が譲渡制限株式等であるとき、特別決議に加えて種類株主総会の特殊決議、対価が持分会社の持分等である場合、特別決議に加えて種類株主全員の同意が必要です(783条、309条)。なお、会社法は、一定の事項(剰余金の配当等)につき権利内容等の異なる株式を発行することを認めていますが(「株主平等原則」の修正)、この株式が種類株式です(108条1項)。

3. 決議の要件

特別決議の要件は、当該株主総会で議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権3分の2以上の賛成です。この定足数は定款で軽減可能です。特殊決議の要件は、当該株主総会で議決権を行使することができる株主の半数以上であって、当該株主の議決権3分の2以上の賛成です。

4. 会社法活用における留意事項

吸収合併において、消滅会社における合併の決議は、原則として特別決議が必要です(783条1項、309条2項12号)。 特別決議については、平成15年改正前商法では、総株主の議決権の過半数または定款に定める議決権の数を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行うことを要件として定められており、特別決議の原則的な定足数や決議要件は会社法でもほぼ同様の規定がおかれています(309条2項)。

しかし、平成15年4月の商法改正により、特別決議の定足数・決議要件は原則従来どおりとしつつ(平成15年改正後商法343条1項)、特別決議においても、普通決議と同様に定款の定めで定足数を軽減することができるようになりました。ただし、軽減する場合は、総株主の議決権の3分の1未満にすることはできないとされていました(平成15年改正後商法343条2項)。

会社法においても、定款による定足数の軽減が認められる点は変更がないので(309条2項)、定款変更がされている場合、特別決議は成立する可能性が高いことになります。他方、定款変更がされていない場合特別決議の定足数の要件は法文の原則どおりですので、当該株主総会で議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席することが難しい場合、特別決議は成立しません。 しかし、消滅会社の合併に関する株主総会決議の手続は、原則として特別決議ですが、例外もあります。例えば消滅会社が種類株式発行会社ではない場合、消滅会社の株主に譲渡制限株式を交付する際には、特殊決議が必要です(783条1項、309条3項2号)。特殊決議の要件は、定款で軽減できません。 したがって、議決権を行使できる株主の半数以上、当該株主の議決権の3分の2以上の賛成は集められないようなケースは、特殊決議は成立しないことになります。合併に反対する株主がいる会社は、議決権の充足に関する入念な準備が必要ということに留意すべきです。

II.組織再編税制の改正

平成13年及び14年度の税制改正により、組織再編税制が整備され、連結納税制度が創設されるなどの大改正が行われましたが、その後の経済環境の変化等を受けて平成18年度の税制改正においても次の見直しが行われました。

1. 株式交換・株式移転に係る税制の本則化と税制の整備

新会社法の制定に合せ、他の組織再編行為との課税の公平性や租税回避の防止、株式交換制度の円滑な利用促進の観点から、これまで租税特別措置法事項であった制度が本則化され、次の見直しがされました。

(1)

完全子法人株式の譲渡損益の繰延べ

株式交換・株式移転により完全子会社となる法人(特定子法人)の株主には、特定子会社の株式と交換に完全親会社となる法人(特定親会社)の株式が交付されます。この場合において、株式の譲渡が行われたものとして、特定子会社の株主に課税が行われますが、次の条件を満たした場合には、特定子会社の株主に係る株式譲渡損益の課税が繰り延べられることになりました。

課税繰延措置の要件

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(2)

完全子法人が有する資産の時価評価による評価損益の計上

次のいずれにも該当しない株式交換が行われた場合には、その完全子法人が有する資産について、時価評価による評価損益の計上等を行うことになりました。

  1. 企業グループ内の株式交換・株式移転
  2. 共同事業を営むための株式交換・株式移転

現行の組織再編税制は、合併、会社分割、現物出資、事後設立を対象とし、株式交換、株式移転は別の取扱いをしていましたが、この改正により、株式交換、株式移転も他の組織再編行為と同列の取扱いがされるようになりました。

(3)

連結納税開始等に伴う時価評価

連結納税開始等に伴う時価評価について、株式交換に係る適用除外法人を、その完全子法人のうち、上記(2)の適用を受けないものに緩和されました。

(4)

連結欠損金額とみなされる欠損金額

連結納税制度において、連結欠損金額とみなされる欠損金額から上記(2)の完全子法人の株式移転の日の属する事業年度前において生じた欠損金額が除かれることになりました。

2. 非適格合併等に係る受入処理の見直し

非適格合併等により資産の移転を受けた場合には、企業結合会計の取扱いに応じた次の措置が講じられるようになりました。

(1)

退職給与に係る債務の計上

企業結合会計の適用が開始されるに伴い、企業会計と税法上の取扱いが相違することによる税務上の問題が生じないように、退職給付引当金の取扱いを企業会計に合わせることになります。

非適格合併等に伴う引継従業者の退職給与に係る債務 ⇒ 負債に計上

(2)

「のれん」又は「負ののれん」の計上

受け入れた資産及び負債の純資産額(A)とその資産の移転の対価の額(B)との差額は、「のれん」(A<Bの場合)又は「負ののれん」(A>Bの場合)として資産又は負債に計上することになります。

資産・負債の純資産価額(A)と移転の対価の額(B) ⇒ 資産又は負債に計上


公認会計士 柿崎 政広