
2007.1.15
新会社法と公開準備会社の留意点(4)−会社機関としての組織−
1.会社法による機関設計
従来の商法又は有限会社法では、会社の類型(株式会社or有限会社)や資本金等の規模に応じて機関設計の選択肢が限られていました。会社法では有限会社が株式会社に統合され、併せて、中小企業や新たに会社を設立しようとする者がそれぞれの会社の実情に応じて会社法制を使い易いものとするための改正が行われました。具体的には、一定の制限の下で会社が定款で定めることにより、任意で機関設計ができるようになりました。
機関設計の選択については、株式の譲渡制限の有無及び大会社(資本金5億円以上又は負債総額200億円以上の会社)であるか否かにより、いくつかの制限があります。区分ごとの選択可能な機関の組合せは次のとおりです。
機関構成 |
株式譲渡制限会社 |
株式譲渡制限のない会社 |
中小会社 |
大会社 |
中小会社 |
大会社 |
取締役 |
選択可 |
× |
× |
× |
取締役+監査役(会計監査権限のみ) |
選択可 |
× |
× |
× |
取締役+監査役 |
選択可 |
× |
× |
× |
取締役+監査役+会計監査人 |
選択可 |
選択可 |
× |
× |
取締役会+監査役(会計監査権限のみ) |
選択可 |
× |
× |
× |
取締役会+監査役 |
選択可 |
× |
選択可 |
× |
取締役会+監査役会 |
選択可 |
× |
選択可 |
× |
取締役会+会計参与 |
選択可 |
× |
× |
× |
取締役会+監査役+会計監査人 |
選択可 |
選択可 |
選択可 |
× |
取締役会+監査役会+会計監査人 |
選択可 |
選択可 |
選択可 |
選択可 |
取締役会+三委員会+会計監査人 |
選択可 |
選択可 |
選択可 |
選択可 |
(注) |
1. |
会計参与は「取締役会+会計参与」以外のすべての機関設計においても任意に設置することができます。 |
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2. |
上記の機関構成の他、株主総会は会社の最高意思決定機関であり、何れの会社においても必要な機関とされています。 |
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3. |
上記のように、一定の制限の下で会社の任意で機関設計ができるようになったことに対応して、取締役会、監査役、監査役会、会計監査人、会計参与又は委員会を設置する定めを置いた場合には、その旨を登記することとなりました。 |
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4. |
株式を上場している会社は、株式譲渡制限のない会社に該当することになります。具体的には、「2.株式を上場している会社の機関」をご参照ください。 |
2.株式を上場している会社の機関
上記のように株式会社の機関設計の選択範囲は広がりましたが、株式を上場している会社の機関はどのようになるでしょうか?
(1) 取締役会の設置
株式を上場するということは、まず、株式の譲渡制限があってはなりません。株式の譲渡制限がない会社では、不特定多数の株主が存在する可能性があり、健全な企業経営とコーポレート・ガバナンスを確保できる機関の設置が求められます。そこで、会社法は株式譲渡制限のない会社について取締役会の設置を定めています。
(2) 会計監査人、監査役会又は三委員会の設置(大会社の場合)
また、大会社上の大会社に該当する場合は、会社の規模が大きくなり利害関係者が増加することから、健全な企業経営とコーポレート・ガバナンスがさらに要請されます。そこで会社法では会計監査人の設置を定めています。さらに株式の譲渡制限のない大会社では、監査役会又は三委員会の設置を定めています。
株式を上場している会社は、会社法上の大会社に該当するケースが多いと思いますが、そのような会社では、取締役会、監査役会または三委員会及び会計監査人の設置が必要になります。
(3) 大会社に該当しない場合
また、大会社に該当しない上場会社では、上記の他、取締役会及び監査役又は監査役会、取締役会、監査役及び会計監査人という機関設計も可能になります。
これらの点については、従来の商法で認められていた範囲と基本的に相違ありません。
また、会社法の適用により、大会社では新たに株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして、法務省令で定める体制の整備(いわゆる内部統制システム)を決定し、その概要を事業報告に記載することとなりました。また、内部統制システムについて監査役が監査することとなりました。
3.これから株式を上場する会社の機関
それでは、これから株式を上場する会社の機関はどのようになるでしょうか?
株式を上場した後の会社の機関は、会社の規模により相違する面もありますが、概ね、取締役会、監査役会又は三委員会及び会計監査人の設置が必要になるケースが多くあります。しかし、上場する以前はまだ会社の規模も小さく、株主も限定されているケースが多いため、会社法上の機関選択の範囲が広く、また、会社の実情に応じた機関設定を行ったほうが、会社運営上は効率的と言えます。
従って、株式上場を目指すためには、どのタイミングで機関設計の変更を行うべきかということになります。会社法上は、株式譲渡制限の規定が定款から削除された時点で会社機関の変更を行うわけですが、通常、譲渡制限を撤廃するのは上場申請の直前であることが通例です。一方、上場審査においては各会社機関が適切に設計され、かつ有効に運用され、健全な企業経営とコーポレート・ガバナンスが確保されているかという観点から、一定の運用期間を設けて審査が行われます。
そう考えると、一般的には株式譲渡制限規定がある場合にも、最低、上場申請直前期の1年間は上場会社としての機関設計の下で会社運営が行われることが必要とされ、できれば、2年間程度の会社機関の運用が望まれます。
4.会計参与と上場審査の関係
会社法の適用により、新たな機関として会計参与制度が導入されました。会計参与は、公認会計士・税理士という会計の専門家が取締役等と共同して計算書類を作成し、計算書類の正確性を確保するために設置される社外役員であり、主として会計監査人の設置義務がない会社について採用されるケースが想定されています。
上場会社として経営管理情報を収集する体制を保持し、必要に応じてタイムリーにディスクローズすることは必要不可欠です。それを可能とするためには、経理業務の中枢部分や判断の介入する余地のある部分について、会社内部で責任と権限を明確にして実施する必要があります。社外役員である会計参与に過度に依存し、それらが会社内部で充分に対応できないということは望ましくありません。
公認会計士 鈴木 学
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