株式公開(IPO)に関する情報

2006.12.11

新会社法と公開準備会社の留意点(2)−公開準備会社と会計参与−

1.公開準備会社と決算処理

全ての会社は正確な計算書類を作成する義務を有しながらも、株主が役員とその親族で構成されており外部株主が存在しないような中小会社の場合、作成のためのスキルを含めて正確な計算書類の作成に苦慮している会社が多数存在するのが現実です。この状況は公開準備の初期段階の会社においても散見されます。

しかし、上場審査においては、少なくとも「上場申請のための有価証券報告書(Tの部) 特別情報」に記載される事業年度については、計算書類の提示が求められます。上場申請直前期から起算して5事業年度分の計算書類が最低限必要となります。

上場申請直前々期に公認会計士(または監査法人)による監査が入ると、「過年度損益修正」が多額に計上されることがあります。平成10年以降新設されてきた会計基準(税効果会計、研究開発費等会計、金融商品会計、退職給付会計、固定資産の減損会計など)を適用してこなかったために、監査開始年度に過年度損益の修正について特別損益項目を使って一括して処理する場合です。また株主総会において過年度の決算内容の訂正を求められるケースもあります。

このため、公開準備を目指す会社は、早期に企業会計を理解し、適切な開示ルール等への対応をしておくことが望まれます。


2.会計参与の役割

会計参与とは、会社の計算書類(計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類ならびに連結計算書類)を取締役(委員会設置会社の場合は執行役)と共同して作成する、新会社法において新たに定められた株式会社の機関です。

会計参与は、いかなる機関形態の株式会社においても任意に設置することができ、定款に会計参与の設置を定めた上で、株主総会により選任されます。ただし、非公開会社(株式譲渡に会社の承認を求める会社)が任意に取締役会を設置し、監査役(会)や3委員会を設置しない場合には、会計参与の設置が強制されます。

会計参与の具体的職務としては、計算書類を取締役・執行役と共同して作成し、またそれに係る報告書(会計参与報告)を作成することです。これらの閲覧・謄本交付請求が株主や債権者からあった場合には応じなければならず、株主総会において計算書類に関する説明義務を負います。また、正確な計算書類を作成するため、当該会社やその子会社に対して会計の報告を求め、業務及び財産状況を調査する権限を有している(会社法374条)ほか、計算書類を承認しようとする取締役会に出席し、必要に応じ意見を述べる義務があります(同376条)。

会計参与の職務の特質から、その資格要件は会計に関する専門的知識を有する者に限定されております。すなわち公認会計士(監査法人を含む)または税理士(税理士法人を含む)であることが、資格要件となっております。また、会計参与の職務の独立性を確保するため、その会社またはその子会社の取締役、執行役、監査役、会計監査人、支配人、その他の使用人を兼ねることはできません(会社法333条)。

このように会計参与が会社の機関として設置されている場合には、関係取引先に対する信頼性も高まるほか、公開準備においても過年度の会計的な対応に煩わされることが少なくなる効果が期待できます。


3.中小企業が計算書類作成にあたり準拠すべき会計基準

会計参与の制度は、主として中小会社の計算書類の正確性に対する信頼を確保するために新設された会社の機関ですので、ここで中小企業が計算書類作成にあたり準拠すべき会計基準についてもふれておきたいと思います。

会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従い作成するものとされております(会社法431条、614条)。これらには、企業会計基準委員会が公表する各種会計基準や、日本公認会計士協会が公表するそれらの適用指針などが全て含まれることとされております。ただし、これらは会計監査人監査が行われる場合を想定しての基準・指針であり、これらの会計基準には中小企業の特性を考慮した簡便的な方法が設けられている場合もありますが、そうでない場合もあります。

そこで、中小企業が適用することができる「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」の指針として、「中小企業の会計に関する指針」(日本公認会計士協会、日本税理士会連合会、日本商工会議所、企業会計基準委員会 平成17年8月1日)というものが公表されました(新会社法の適用に合わせ平成18年4月25日に改正)。とりわけ、会計参与設置会社が計算書類を作成する際には、本指針によることが適当であるとされております。ただし当指針は、それほど多くの簡便的な手法を許容しているものではなく、会社計算規則の規定に応じ、主に非公開会社において必要な注記の記載が限定されている点が特徴であると言ってよいでしょう。

次回は、会計参与制度を利用した場合の留意点等にふれたいと思います。

公認会計士 越島 裕二

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