株式公開(IPO)に関する情報

2006.5.8

新会社法と公開準備会社の留意点(1)

−資本政策【2】 株式無償割当とデッド・エクイティ・スワップ−

前回に引続き、株式無償割当とデッド・エクイティ・スワップについて取り上げます。


1.株式無償割当

(制度の概要)

株式の無償割当という制度が会社法において創設されました(会社法185)。これは、株主に対して、所有する株式数に応じた一定割合の株式発行または自己株式の交付を行うことができる制度です。株式分割と類似していますが、以下の点で両者は相違します。

無償割当

株式分割

決定機関

取締役会設置会社は取締役会、それ以外の会社では株主総会。ただし、定款で別段の定め(例えば、代表取締役に決定させる旨の定め)をすることができる。

取締役会設置会社は取締役会、それ以外の会社では株主総会。

増加する株式の種類

無償割当の対象となる種類の株式と異なる種類の株式の割当も可能。例えば、優先株式を保有している株主に普通株式を割り当てることも可能。

分割の対象となる種類の株式がそのまま増加する。例えば、普通株式を対象として株式分割を行った場合、普通株式が増加することになる。

自己株式

自己株式に対しては、割当は生じない。

自己株式の数も増加する。

自己株式の交付

自己株式を交付することもできる。

自己株式の交付は生じない。

増加株数の限度

授権枠の範囲内で行う。

原則として授権枠の範囲内で行うが、普通株式しか発行していない場合は、実質的に無制限に分割することも可能(会社法184(2))。

ただし、上場会社の場合は、取引所の要請により大幅分割は制約されている。



(上場準備会社における活用例)

上場準備会社の資本政策では、株式数に関連する上場基準(注1)を充足するなどのため、資本政策の過程で発行済株式数を増加させる必要が生じてきます。従来、資金調達を伴わないで発行済株式数を増加させようとした場合、株式分割を用いることが一般的でしたが、新たに無償割当の制度ができたことにより、発行済株式数を増加させる方法の選択枝が増えたことになります。例えば、種類株式を発行している会社で、上場に向けてこれ以上種類株式を増やしたくないときは、種類株主を含む全ての株主を対象に普通株式の無償割当を実行するといったことが考えられます。

(注1)

市 場

形 式 基 準

東京証券取引所

上場時に発行済株式数4,000単位以上

大阪証券取引所

上場時に発行済株式数2,000単位以上

ジャスダック

最低公募売出株数500単位

マザーズ

上場時に1,000単位以上の公募または売出が必要

ヘラクレス

最低公募売出株数500単位



2.デッド・エクイティ・スワップ

デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap, 以下、「DES」)とは、債務の株式化のことをいいます。通常、債権を保有する銀行などが融資の一部を現物出資する形で株式を取得します。一般的に、経営不振企業を再生する際に用いられます。

旧商法下ではこのDESを実行するにあたって、原則として検査役の調査が必要とされていました(商280ノ8)。そのため、その実行に時間とコストがかかってしまい、それがDESの実行を躊躇させる要因にもなっていました。会社法ではこの規制を緩和し、履行期が到来している金銭債権を当該債権の帳簿価額以下で出資する場合には、検査役の調査を必要としないものとしました。これにより、DESを活用した資本政策が柔軟に行えるようになり、債権者側も事業再生を目的として積極的に活用することが可能になりました。

公認会計士 橋本 裕昭

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