あずさ監査法人

企業再編税制と株式公開

2001.12

I.企業組織再編制度の整備と平成13年度の企業組織再編に係る税制改正

バブル経済崩壊後の経済状況下にあって、企業のリストラクチャリングが活発化し、これを実行容易なものとするため、商法上、企業組織再編成のための制度が整備されてきました。

すなわち、

 平成9年には、持株会社の解禁・簡易合併などの合併手続の簡素化
 平成11年には、株式交換・株式移転制度の導入
 平成12年には、会社分割制度の導入
という観点から商法等の改正がなされてきましたが、平成12年の会社分割制度の導入に伴い、平成13年度の税制改正では、会社分割税制の導入とともに、合併等の従来の組織再編成にかかわる税制についても大幅な改正が行なわれています。

そこで、今回は、会社分割と合併における移転資産の税務上の取り扱いと合併税制の変更点について記載します。

II.会社分割

1.会社分割の類型

会社分割は、新たに発行する株式の交付先により、「分割型分割」と「分社型分割」に分類されます。「分割型分割」は分割される会社の株主に株式の交付が行なわれ、「分社型分割」はもとの分割会社に株式の交付が行なわれます。

また、会社分割は、分割される部門が単独で会社になるのか又は既存の会社の一部門になるのかにより、「新設分割」と「吸収分割」に分類されます。単独で会社になるのが「新設分割」、既存の会社の一部門になるのが「吸収分割」になります。

これらの組み合わせにより、会社分割は、「分割型新設分割」、「分割型吸収分割」、「分社型新設分割」、「分社型吸収分割」の4類型のいずれかに該当します。例えば、子会社を新設し、これに分割した事業部門を移転する「分社型新設分割」や、同じく「分社型新設分割」でも合弁事業のため複数の会社がそれぞれの事業部門を分割し、新設会社に移転する等のさまざまなパターンが考えられます。

2.会社分割に伴う移転資産の税務上の取り扱い

(1)移転資産の譲渡損益の取り扱い

会社分割を行ない、法人が所有する資産を他の法人に移転した場合には、税務上は、原則として移転資産の譲渡損益を計上することになります。

但し、一定の要件を満たす適格分割の場合には、移転資産を税務上の簿価で引き継ぐことになり、譲渡損益に対する課税は生じないことになります。

(2)適格分割の要件

適格分割と認められるためには、分割会社と分割承継会社との持分関係により、それぞれ次の要件を満たす必要があります。

なお、いずれの場合も

1)

移転資産の対価として株式以外の資産が交付されていないこと(利益の配当等の交付の場合は除く)

2)

「分割型分割」の場合には、分割会社の従来の株主の持分比率に応じて株式の交付がなされること
が要求されます。

(i)

分割会社と分割承継会社が100%の持分関係で分割後も当該支配関係の継続が見込まれる場合には、上記の他に要件は要求されていません。

(ii)

分割会社と分割承継会社が50%超100%未満の持分関係で分割後も当該支配関係の継続が見込まれる場合には、上記の他に次の要件がすべて要求されます。

1)

分割事業の主な資産および負債が分割承継会社に引き継がれること(独立事業要件)

2)

分割事業の従業員の概ね80%以上が分割承継会社に引き継がれること(従業員引継要件)

3)

分割事業が分割承継法人において引き続き営まれる見込みであること(事業継続要件)

(iii)

50%以下の持分関係で共同事業を行なう組織再編成の場合には、上記の他に次の要件がすべて要求されます。

1)

上記(ii)の1)・2)・3)の要件をいずれも満たしていること

2)

分割事業と分割承継会社の事業に関連性があること

3)

それぞれの事業の売上金額、従業員数等の規模が5倍を超えないか又は分割法人の役員と分割承継法人の常務以上の役員が、分割後の分割承継法人の常務以上の役員に就任すること

4)

分割承継法人の株式を継続して保有する見込みがあること(継続保有要件)

上記の(i)から(iii)のいずれかに該当する場合には、移転資産が分割法人から分割承継法人へ簿価で引き継がれるため、資産移転に伴う譲渡損益の計上は繰延べられることになります。

(3)株式公開と会社分割の税制

既公開会社において、将来の成長が見込まれる事業部門を会社分割により別会社とし、この別会社の株式公開を予定しているケースで、会社分割に伴う資産移転の税務上の影響を検討してみます。

例えば、「分社型新設分割」を行ない分割会社の100%子会社を設立した場合、将来の株式公開が予定されていることから、分割会社と新設会社に100%の持分関係が継続して見込まれることには該当しません。しかし、資本政策を策定し、将来も分割会社と新設会社に50%超の持分関係が継続して見込まれる場合には、50%超100%未満の持分関係の適格分割の要件に当てはめて要件に該当すれば、税務上移転資産の譲渡損益を繰り延べることができます。

一方、「分割型新設分割」を行ない別会社を設立した場合、株式は分割会社の株主に交付されるので、分割会社に持分比率50%超の支配株主がいなければ、50%超100%未満の持分関係の適格分割にも共同事業の適格分割にも該当しないため、税務上移転資産の譲渡損益を繰り延べる余地はなくなります。

したがってこのケースでは、移転資産の譲渡損益を繰り延べるのであれば、「分割型新設分割」ではなく「分社型新設分割」を採用することになります。

III.合併

1.合併に伴う移転資産の税務上の取り扱い

合併の場合も会社分割の場合と同様に、税務上、原則として被合併会社に移転資産の譲渡損益を計上することになりますが、一定の要件を満たす適格合併の場合には、移転資産を税務上の簿価で引き継ぐことになり、譲渡損益に対する課税は生じないことになります。

なお、適格合併の要件は、(i)合併会社と被合併会社が100%の持分関係にある場合、(ii)合併会社と被合併会社が50%超100%未満の持分関係にある場合、(iii)合併会社と被合併会社が50%以下の持分関係にある場合、に分類し、それぞれ要件を会社分割の場合と同様に規定しています。

2.合併税制の主な変更点

(1)被合併会社の繰越欠損金の引継

従来、被合併会社において繰越欠損金を有する場合、合併の際に切り捨てられ、合併会社への引継ぎは認められていませんでした。

しかし、企業のリストラクチャリングを促進するため、適格合併の場合には原則として繰越欠損金の引継ぎを認めることとし、適格合併のうち企業グループ内の合併である(i)合併会社と被合併会社が100%の持分関係にある場合、(ii)合併会社と被合併会社が50%超100%未満の持分関係にある場合、には、繰越欠損金の利用に制限がかけられることになりました。

企業グループ内の適格合併である(i)・(ii)のケースにおいて、企業のグループ化後5年以上経過している、またはみなし共同事業要件を満たす場合に、繰越欠損金の全額が利用可能となります。

一方、企業のグループ化後5年経過しておらず、かつ、みなし共同事業要件も満たしていない場合には、繰越欠損金を有する被合併会社の企業のグループ化時における純含み益が繰越欠損金を上回る場合には全額利用可能ですが、下回る場合には利用可能額が制限されます。

(2)清算所得に対する課税及び合併差益のうち評価益に対する課税の廃止

従来、合併の際に、被合併会社の資産について時価以下で評価益を計上することが実務上広く行なわれており、評価益は、被合併会社の株主に交付される株式等の金額または合併会社の合併差益に含まれていました。

改正前の税制においては、評価益が被合併会社の株主に交付される株式等の金額に含まれている場合には、被合併法人に対して清算所得が課税され、評価益が合併会社の合併差益に含まれている場合には、合併会社に対して課税が行なわれていました。

しかし、今回の税制改正で、適格合併の場合には移転資産の簿価での引継ぎが認められ、また非適格合併の場合には移転資産の譲渡損益を認識し、被合併法人に課税されることとなったため、清算所得及び合併差益に対する課税は廃止されることになりました。