株式公開(IPO)に関する情報

2001.11

トラッキング・ストック

トラッキング・ストックとは、一つの会社内の特定事業部門やセグメントの業績をもとに、投資家に対して配当を提供する種類株(クラスストック)のことをいいます。大規模な事業再編が相次ぎ、M&Aや大型IT投資のための資本調達手段として、近年注目を集めていますが、日本においてはトラッキングストックに関する明確な規定がなく、法整備についてもいまだ検討段階にあります。

平成12年11月にソニー(株)は100%子会社であるソニーコミュニケーションネットワーク(株)を対象とする「日本版トラッキング・ストック」を発行すると発表し、東京証券取引所では、これを受けて平成13年1月に規則改正を行ない、「子会社連動配当株」として上場が認められることとなりました。


1.トラッキング・ストック(子会社連動配当株)とは何か

今回、上場が認められたトラッキング・ストックは、正式名称を「子会社連動配当株」といい、発行者がその連結子会社の業績、配当等に応じて株主に利益配当を支払うことを内容とする種類株と定義されています。その仕組みは以下のとおりです。



2.子会社公開とトラッキング・ストック

トラッキング・ストックの発行は子会社の事業価値を株式市場で顕在化させ、その成長力を担保に資本市場から資金を調達する点で、子会社公開に類似したものであると考えられます。両者を比較すると以下の様になります。

 

トラッキング・ストック

子会社公開

株式の市場性

あり

あり

資金調達の主体

親会社

子会社

株主の議決権

親会社に対する議決権

子会社に対する議決権

親会社の支配力

維持可能

支配力低下(公開基準充足のため)


トラッキング・ストックの場合、子会社に対する支配力を維持したまま、事業価値を顕在化させ、資金調達できる点に特徴があります。その反面、一般投資家にとってはその仕組みが理解しにくい点は否めず、トラッキングストックに関する詳細な権利・義務関係の規定が必要になります。


3.資本政策との関係

グループ戦略において成長段階にある対象子会社が中核事業を営んでいる場合には、親子の支配関係を維持することが重要となり、子会社に対する議決権を希薄化させることなく、資金調達を可能にするトラッキング・ストックは有効です。なぜなら、子会社株式公開では、上場審査で親会社からの独立性が求められることや上場後の増資により、親会社持分の一部を放出することになり、外部株主が発生することから、親子の連携は弱まり、時として、戦略をめぐる親会社との意見の相違を生み、グループ戦略の妨げとなる可能性もあるからです。

他方、子会社が独立した事業を展開している場合、子会社公開は当該企業グループの財務戦略上、有効な手段になるといえます。子会社株式の売出により、それまでの投資資金の回収が可能になるだけでなく、子会社が独自に株式市場から資金調達可能な会社になることによって、さらに強固な事業基盤を築くことが期待され、親会社としての支配力は低下するとしても、グループ全体としての企業価値を高めることにも繋がると考えられるからです。

子会社の展開する事業の位置付けと資本政策の関係を図で示すと、一般的には次のような関係になると思われます。


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