あずさ監査法人

組織の整備

2001.06

1. 総括

会社は、株式公開に当たり経営者の個人的経営から脱却し、組織的経営を行なうことが必要になります。株式公開の審査においても、経営管理組織の整備および運用状況は重要項目となっています。経営組織に関しては、株式公開審査上、以下の点がポイントになります。

  • 職務と権限が明確になるような組織となっているか
    規程類の整備と合わせて各部門間の職務と権限を明確にする必要があります。
  • 指揮命令系統が明確となるような組織となっているか
    損益責任が明確となるような組織となっているかを検討する必要があります。
  • 各部門の機能にふさわしい責任者と担当者が配置されているか
    たとえば、今後、さらに組織が拡大していく場合、中間管理職を養成し、効率的に会社を運営することが必要になります。特に、専門性の高い分野(特に管理部門)については、適切な担当者を配置することが必要となります。
  • 監査役および内部監査制度は有効に機能しているか
    株式公開審査上は、監査役が実質的に機能する必要があり、また、内部監査制度についても最低1年間の運用実績が必要になります。

2. 取締役会

取締役会は、会社経営の意思決定を行ない、取締役の業務執行を監督するとともに、取締役の忠実義務違反、競業避止義務違反および背任行為などをチェックする重要な機関です。
株式公開の審査においては、取締役会の構成および運営の状況について審査が行われます。

(1)

取締役の員数および構成

 

取締役の員数は商法上、最低3名と定められておりますが、期中での退任がある場合などを考慮すると最低4名が必要と考えられます。
また、株式公開審査上は、取締役のうち同族関係者は原則として半数未満であることが求められます。これは、意思決定の公正性の確保など、いわゆる同族経営の弊害を回避することを趣旨としています。
さらに、取締役のうち実質的に経営に参画していない名目的な取締役は、株式公開申請上、認められません。

(2)

取締役会の運営

 

取締役会は、商法上、3ヶ月に1回以上の開催が義務づけられています。また、取締役会での決議事項は法定されているものがあります。最低限、これらの法定事項(重要な財産の処分および譲受、多額の借財、重要な組織の設置・変更および廃止など)については、決議が漏れなく行われることが必要になります。また、議事録は商法上、その作成および10年間本社へ備置することが義務づけられており、これを遵守する必要があります。

3. 監査役・監査役会

商法上、監査役は取締役の職務の執行を監査する機関として定められています。未公開会社では、監査役制度が機能していない傾向がありますが、株式公開審査の対応の必要上のみならず、株主代表訴訟に象徴される株主権の強化に備えるためには自己監督機能に重点を置くことが必要です。

(1)

監査役の員数および構成

 

商法上、資本金が1億円を超える会社の監査役は、会計監査および取締役の業務監査を行なう責任、権限を有しています。また、公開申請会社として、遅くとも公開申請の直前事業年度に係る定時株主総会までには複数にしておくとともに、そのうち少なくとも1名は常勤であることが必要になります。
さらに、増資などにより商法上の大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社)に該当することになった場合、その該当することとなった事業年度に係る株主総会において3名以上の監査役(うち常勤1名、社外監査役1名以上)から組織される監査役会を設置することが必要になります。
なお、株式公開審査上、業務の性質から監査役に役員の同族関係者が就任することは認められません。

(2)

監査役が実質的に機能しているか

 

株式公開審査上、監査役については取締役会への出席状況、監査状況に関わる記録などから監査役(会)が実質的に機能しているかが問われます。
株式公開上は、監査役が責務を果たすために取締役会に出席して、取締役の業務執行を監査することが必要となります。

4. 内部監査部門

内部監査は、会社財産の保全、業務の改善、業務効率の推進、会社不正および誤謬の防止・発見を目的として行われ、業務の内容は主に以下のとおりです。


  • 会計監査
    主として会社資産保全の観点から、本社および各事業所で保有する資産と会計帳簿との整合性を監査する。
  • 業務監査
    主として業務手続の遵守状況の観点から、各規程類、マニュアルなどの所定の業務手続に準拠して業務が行われているかを監査する。

株式公開審査上も、内部監査制度は会社運営上欠かせないものとして整備することが求められます。


(1)

内部監査部門の位置付け

 

内部監査部門を設置する場合、社長の直属機関として他のライン・スタッフ部門から独立した部門として位置づけることが必要になります。また、株式公開審査上、内部監査人は原則として専属であることが必要になります。
また、内部監査制度については、少なくとも公開申請の直前事業年度1年間の実績を残す必要があります。具体的に、内部監査部門においては監査計画書、監査報告書などの作成、被監査部門においては監査結果を受けた改善計画書、その実施状況報告書などの作成が求められます。

(2)

内部監査部門と監査役との関係

 

監査役の監査業務が取締役の業務執行の監査を行なうのに対し、内部監査は経営者のために職務を行なうことになりますので、両者の兼任は認められません。

5. 社内規程

組織を運営するに当たっては、明確なルール・基準が必要であり、そのルール・基準を成文化したものが規程です。株式公開の審査においては、諸規程の整備運用の状況を検討することで、組織の運営が合理的に行われているかがチェックされます。また、民法、商法、労働基準法、独禁法などの関連法規との整合性に留意する必要があります。
なお、諸規程の一例を示せば以下のとおりです。

基本規程

 

 

組織規程

 

 

 

 

 

人事労務関係規程

 

 

 

 

 

 

 

定款

取締役会規程

株式取扱規程

組織規程

組織図

職務分掌規程

職務権限規程

稟議決裁規程

規程管理規程

就業規則

給与規程

従業員退職金規程

役員退職金規程

人事考課規程

旅費規程

慶弔見舞規程

従業員貸付金規程

 

業務関係規程

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総務関係規程

 

 

 

 

 

 

経理規程

固定資産管理規程

資金運用管理規程

棚卸資産管理規程

販売管理規程

購買管理規程

予算管理規程

与信管理規程

内部監査規程

関係会社管理規程

社宅規程

持株会取扱規程

印章管理規程

内部情報管理規程

車両管理規程

 

 

(注)これらの規程類がすべて必要とは限らず、業種によっては、これら以外の規程を必要とする場合もあります。また、規程のほかに販売管理、購買管理、棚卸、経理業務などの重要業務については各規程に対応したマニュアル類も必要となります。